人々の生活環境が大きく変わる中、インセンティブのあり方も大きく変容している。ここでは、インセンティブを組み込んだプロモーションのプランニングにおける重要なポイントについて解説する。
近年、プロモーションにおけるインセンティブのあり方は大きく変容しています。リアルな“キャンペーングッズ”が占める割合は減少し、クーポンやポイントなどのデジタルインセンティブが中心になりつつあるのです。
その背景としては次の3つの理由が挙げられます。①個人の趣味趣向の多様化。「誰もが欲しくて」「みんなが話題にする」コト/モノが、プロモーションに限らず存在しにくくなったということ。②キャッシュレス決済の普及によりポイントやクーポンなどのデジタルインセンティブの使用範囲が拡大して、その価値が相対的に上がったこと。③リアルインセンティブよりもデジタルインセンティブのほうが低コストで運用ができること。
大まかにこのような背景により、今やデジタルインセンティブが大きな割合を占めるようになってきています。プランニングする側もこうした理由でポイントやクーポンを採用する機会が増えたのではないでしょうか。
ブランドに寄与するための設計
ではプロモーションプランニングにおいて、今後はポイントやクーポンだけをインセンティブとして検討すればよいかというと、答えはNoになります。顧客の行動を促すという側面では、利便性が高く低コストであるデジタルインセンティブは確かに有利といえます。しかしブランディングという側面に目を向けると、ポイントやクーポンにより短期的な「買い」を獲得できたとしても、長期的なブランディングに対して効果をあげることは難しいと言わざるを得ません。
では、ブランディングに寄与するためには、どのようなインセンティブを設計すればよいのでしょうか。そのためには、ブランドと顧客の両方に視点を向けて設計する必要があります。
デジタル・リアルの接続
プロモーションプランニングにおいては、デジタルとリアルのインセンティブを使い分け、①ブランドのコンディション ②顧客がカスタマージャーニーの中でどの位置にいるのかという2つの軸で細やかに設計していくべきです。
例えばマス向けの新発売の商品の場合は、まだ誰も使ったことがないという状況ですから、まずは、いち早く多くの人に体験してもらえさえすれば、一定の割合は継続購入層として定着が見込めるという判断も成り立つでしょう。その場合には顧客の最大公約数を狙ってクーポンやポイントといったインセンティブを取り入れ、効率よくトライアルを獲得していくべきです。
一方で、定番ブランドの課題が顧客の離反だった場合には、その商品が提供する価値をあらためて...