2021年4月にアサヒビールが発売した「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は、全開になる缶のフタを開けると自然に泡立つ画期的な商品だ。発売からすぐに販売数量が想定を大きく上回り、販売を一時休止することとなった同商品について、中島健氏に聞いた。
DATA
- 商品名:アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶
- 実勢価格:219円
- 主な販路:コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストア
ビールの楽しさを伝えたい
──開発のきっかけを教えてください
開発は4年前にスタートしました。缶のビール系飲料には発泡酒や第3のビールと呼ばれる新ジャンルもあり、競争が激しくなっています。加えてチューハイやハイボールのブームや梅酒など、瓶入りのリキュール系のお酒を割るという楽しみ方もあり、「家飲み」シーンでビール以外の選択肢が充実してきたのがちょうどその頃でした。
アサヒビールとしては、お酒を飲むシーンでビールを選んでもらうために、家飲みでの不満をアンケート調査しました。多くの人は手軽で安価に、いろいろなお酒を楽しめるのであまり不満はなかったのですが、「家でもお店のように生ビールを飲みたい」という意見がありました。その望みを実現すればビールを選ぶ理由づくりになるのではないかと考えました。
──その時点で今の缶で出すことが決まっていたのですか。
実は、10年ほど前にもフタが全開になる缶の構想はあり、インタビュー調査も行っていました。そのときは単純に大きな飲み口からゴクゴク飲むことができれば喜んでもらえると考えていたのですが、良い反応が得られませんでした。
缶ビールを飲むとき、多くの人は頭の中に泡と液体がバランスよく注がれた姿をイメージしています。缶が全開になり、泡のない金色の液体だけだと、おいしく見えないのです。その際は開発には至りませんでしたが、泡がカギになるということはひとつの気づきでした。
泡を再現する方法としてはホームサーバーや超音波で振動を与えることも視野に入れました。ただ、どちらも本格的ではあるものの、道具の手入れなどの手間がかかります。今回、私たちは買って、開ければすぐにお店のような気分でビールを楽しめる「ワクワク感」と「手軽さ」を追求して開発しました。
今回、多くの人に受け入れられたのは、全開にしても口を切る心配がないフタと、自然に泡立つ缶を開発できたことが大きなポイントになりました。
革新的な缶(全開、泡立ち)
ヒットの大きなポイントとなったのは新たな缶の開発だ。フタを全開にしても安全な飲み口と、内側に特殊な塗装を施すことで自然にきめ細かい泡が立つ缶の存在が缶ビールに新しい価値を生み出した。
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