シヤチハタが2016年に発売した「手洗い練習スタンプ おててポン」は、発売後1年で7万個を出荷するヒット商品に。スタンプの新たな価値を見出したシヤチハタ デジタルマーケティング部商品企画課 主任 松田孝明氏に、その仕掛けについて聞いた。
DATA
- 商品名:手洗い練習スタンプ おててポン
- 参考小売価格:550円(税込)
- シリーズ全体 2020年出荷数:43万個以上
- 主な販路:各流通店舗、小売店など
印影を「消す」という新しい発想
──「おててポン」は産学連携の取り組みから誕生したそうですね。
当社は2010年から名古屋芸術大学と産学連携を開始しました。この取り組みで2012年に学生から提案を受けた「ウォッシュポン」がコンセプトの元になっています。これまでも肌に押すアイデアはありましたが、印影を「消す」ことを目的にはしていなかったので、すごく面白く、新しいアイデアだと感じました。
少し時間が空いたのですが、子ども向けの商品シリーズで母親の役に立つ商品を発売することになり「ウォッシュポン」のアイデアを採用することになりました。商品化にあたって、より使い勝手の良いものにしたいと考え、印影のデザインや本体デザインなども新規に考え直しました。商品名も権利の関係で使えないことが分かったので、新たに「おててポン」として2016年に発売しました。
商品デザイン
使いやすさを意識した押しやすい柔らかさの本体を採用。土台も手のひらに使うことをイメージした手の形にしたほか、かわいいウイルスの印影を使い、楽しく手洗いができるようにこだわった。パッケージも含めた商品そのものがプロモーションの一部として機能した。
2020年は年間43万個を出荷
──販売動向はいかがですか。コロナ禍によってどのような変化がありましたか。
当社は販売店を通じて売っていますので出荷量になりますが、発売後約1年で約7万個出荷しました。10万個売れるとヒットという業界で、当社としても非常に大きな数字になっています。
その後、2018年、19年と出荷数量は落ち着きました。ただ、メディアへの露出は発売当初から変わらず、冬場を中心によく取り上げていただいておりました。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大によって、マスクや消毒液の不足が問題になりました。そのタイミングで大手新聞社で手洗いの重要性に焦点を当てた特集記事が掲載され、そこで手洗いに関連する商品のひとつとして「おててポン」を紹介いただきました。これをきっかけにSNSやウェブメディア、テレビの情報番組でも取り上げられ、全国へ波及しました。メディアでの採用が広がるにつれて問い合わせも増え、生産が追いつかなくなるほどでした。
2020年の...
あと60%
この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。