嗜好性が多様化する時代 消費者の価格評価のメカニズム
消費者が感じる「値ごろ感」とは何か。その理解を深めるには、「価格評価」の理解が必要だ。販売にどのように活かせるのか、筆者が解説する。
現代消費者の「値ごろ感」を捉える
自宅にいる時間が増え、コーヒー、お茶などの需要がいま伸びている。消費者の中ではどのような価値の感じ方の変化が起きているのか、コーヒーコンサルタントに話を聞いた。
QAHWA
代表取締役/第15代ワールドバリスタチャンピオン
井崎英典(いざき・ひでのり)氏
2014年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップにてアジア人初の世界チャンピオンに輝く。ヨーロッパやアジアを中心に商品開発からマーケティングまで一気通貫したコンサルティングを行う。著書に『世界一美味しいコーヒーの淹れ方』ダイヤモンド社など。
もともとはバリスタとして働いていましたが、今は独立して、事業の主軸としてコーヒーのコンサルタントをしています。品質管理、改善、開発、マーケティングなどをサポートし、日本や海外のメーカー、外食チェーンなどがクライアントです。世界最先端のコーヒーの技術や知識を学べるオンライン教育を行う、「バリスタハッスル」という教育事業も運営しています。そして、2019年から構想していましたが、消費者向けのコーヒー商品の展開も、事業拡大のために検証を始めています。
2020年4月の緊急事態宣言を受けてメディアから取材を受けることが多くなり、その際に「自宅でコーヒーを美味しく飲むには」という内容が増えました。在宅によるおうち時間増加が影響していますね。家にいる時間があるので、新しい趣味を始めてみようという人が多かったんです。
全日本コーヒー協会によれば、日本のコーヒー消費量は前年比3.7%減少したものの、レギュラーコーヒーの売上は増加傾向にあるそうです。豆から挽いて丁寧に入れる消費者が増えたようです。コーヒーは豆を挽くことから始まり、お湯を注いで、香りを嗅いだり、五感で「抽出」という過程そのものを楽しめます。在宅時間の増加によって、コーヒーを生活に取り入れる方が増えたんだと思います。
また販売側では、EC化が進みました。カフェは都心の一等地から撤退している企業も見られますね。
コーヒーショップは単価が安くトップラインを伸ばしにくい業態です。スケールさせるためには、多店舗展開して営業利益を積み重ねる方法が一般的です。我々は最小資本でスケールできる付加価値の高いビジネスモデルを探し続けていました。
最初は、クラウドファンディングでボトル入りコーヒー牛乳の開発を進めました。銭湯で飲むコーヒー牛乳を新しくしようと思ったんですね。誰しも湯上がりのコーヒー牛乳は好きだと思います。
コーヒーのプロの目から見ると、市販にあるコーヒー牛乳は美味しくありませんし、そこに改善の余地があると...