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現代消費者の「値ごろ感」を捉える

嗜好性が多様化する時代 消費者の価格評価のメカニズム

白井美由里(慶應義塾大学)

消費者が感じる「値ごろ感」とは何か。その理解を深めるには、「価格評価」の理解が必要だ。販売にどのように活かせるのか、筆者が解説する。

製品の価格を見ると、ごく自然に高い、安い、手ごろなどと感じます。この販売価格に対して生じる割高感、割安感、あるいは値ごろ感のことを価格評価といいます。よく知らない製品でも価格を見れば同じように感じますし、高価格を受容する製品もあれば低価格を拒否する製品もあります。価格評価はどのように行われているのでしょうか。本稿では、このメカニズムについて解説します。

価格評価は、消費者が評価の基準とする価格を記憶から想起し、それを販売価格と比較することによって行われます。(図1)

図1 価格評価のプロセス

この基準価格のことを「内的参照価格」といいます。両者を比較したときに、販売価格が内的参照価格よりも高ければ割高に、逆に低ければ割安に、そして同程度であれば手ごろに感じます。

例えば、ペットボトル500mlのお茶の価格を120円とした場合、内的参照価格が100円の消費者には20円分の割高感が生じるのに対し、140円の消費者には20円分の割安感が生じます。この差が大きくなるほど割高感も割安感も強くなります。内的参照価格は消費者にとっての適正価格であり、価格評価の決め手なのです。

内的参照価格とは何か

内的参照価格について詳しく説明しましょう。内的参照価格は、消費者が過去に観察してきた販売価格に基づいて形成さたもので、記憶されています。過去の価格は、同じ製品の価格だけの場合もあれば、同じ製品カテゴリー内の複数製品の価格の場合もあります。形成された内的参照価格は、「180円」のような具体的な数値、「180円ぐらい」のような曖昧さを含んだ数値、あるいは「150〜180円」のような幅になっています。観察した価格と想起した内的参照価格を統合しながら更新されます(図2)

図2 内的参照価格の形成プロセス

当然のことながら、高価格ばかりを見てきた場合には高く、低価格ばかりを見てきた場合には低くなります。

よく知らない製品の場合、価格の観察経験はほとんどないので、内的参照価格は記憶に保持されていません。しかし、それでも価格が評価できるのは、大体の適正価格を思い浮かべることができ、それを内的参照価格とするからです。この場合、何らかの関連性がある製品カテゴリーの内的参照価格が使われると考えられます。根拠が薄いので、初めて観察した価格が内的参照価格に置き換わります。

内的参照価格は消費者、製品、および状況の3要因の影響を受けます...

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