1950年に創業した東京・大崎の銭湯、金春湯。家業を継いだ元SEがITを駆使して業務を革新、地域とのコラボイベントなど新規客層を取り込む策もくり出す。
JR山手線大崎駅から徒歩7〜8分ほどの住宅街にある「金春湯」。1950年、演芸場だった建物を銭湯に転じて創業、その後、現在運営に携わる角屋文隆氏の祖父が購入した。
角屋氏はシステムエンジニア(SE)として勤務していた光学機器メーカーから転身、2019年に家業の銭湯を継いだ。ITを駆使した運営で老舗に新風を吹き込む。
サウナの混雑状況をウェブサイトで確認できるようにしたのはその一例。番台から状況を確認し、手元のタブレットで随時更新している。「20年の緊急事態宣言時に休んでいたサウナを、解除が明けて再開した際に始めました」と角屋氏は話す。その情報はSNSで広まり、遠方からもサウナを目当てに客が訪れるようになった。
会社員時代から店のサイトやTwitter運営を担うなど、家業のサポートを行っていた角屋氏。自身が銭湯経営に携わるようになり、SNS活用もより本格化した。ただし、「店の情報を発信するというより、お客さまの声を聞いてコミュニケーションをとるツールと考えています」と言う。
日々のタイムラインには、訪問客が金春湯を舞台にして綴るnote発信小説や、角屋氏自身の、近所にオープンした店に関するつぶやきが流れる。「このあたりは他から移住してくる方も多いので、地域の動きを...