カレンダーからチャンスを見いだす 市場機会がある歳時・記念日
1年を過ごす中で起こる歳時・記念日。自社の販促にとって重要なタイミングはどれか。機会を捉えるための考え方、現在の状況について解説する。
コロナで動く 消費のタイミング
母の日、迎春の花など固定の歳時で需要がある花。新たな需要を生み出すために、花の国日本協議会は様々な機会を捉えている。花き業界の需要を生み出すプロモーションについて話を聞いた。
花き業界にも多くの協会がありますが、生産者、流通、小売それぞれ縦割りの組織がほとんどで、業界内を横につなぐ団体がありませんでした。「花の国日本協議会」は、業界全体で消費者を向き、花の魅力を伝えるプロモーションを推進すべく、2014年に発足しました。
協議会の前身は、2010年に有志でスタートした「フラワーバレンタイン推進委員会」で、その活動をきっかけに全国各地で消費拡大を目指すチームが派生したことから、フラワーバレンタイン以外のプロモーション活動も担っていく新法人を設立しました。日ごろはライバル関係の競合たちが同じテーブルに集い活動しています。実働部隊は協議会の理事企業各社から若手が選抜され、協同で展開するプロモーションの企画・運営をしています。
「母の日」に花を贈る文化は有名ですが、将来的に新しい文化となりうる、新たな消費のパイを生み出していこうという考えのもと、2011年に生まれたキャンペーンが「フラワーバレンタイン」になります。
花の消費が下げ止まらない状況の中、業界を挙げて消費者に花の魅力を伝える活動をもっとしなければ!と、当協議会の理事長でもある、青山フラワーマーケットを運営するパーク・コーポレーション代表取締役の井上英明氏が旗振り役となり、主旨に賛同くださる企業や団体を集めました。活動のテーマを決める際の議論では、業界の共通課題をあげていきました。
例えば花の消費がガクッと低迷する1〜2月の底上げをすることで、年間の売上を平準化し花店の経営を安定させてはどうか、という意見や、諸外国のように日本の男性にももっと花を贈ってもらうようになるといいね、といったアイデアが出てきました。
1〜2月に何か新しい記念日をつくろうかという案もありましたが、認知を獲得するまでに非常に時間を要することから、既存の歳時に狙いを定めました。
2月14日のバレンタインデーなら誰もが知っているイベントであることと、世界を見渡せば、バレンタインデーには主に男性が愛する人に花を贈る文化があり、「世界で一番花が売れている日」でもあるのです。このファクトがあることは、男性の花贈りを増やしたいと考えていた当時のわれわれにはまさにうってつけで、世界標準のバレンタインの風習を紹介していくことが、男性の花贈りのきっかけになると考えました。
「フラワーバレンタイン」というイベントに乗っかって試しに花を贈ってみたら、大切なパートナーが過去最高の笑顔で喜んでくれた!といった幸せな成功体験をしてもらい、いずれ年間通じて誕生日や結婚記念日など様々な機会に花を贈ってもらうようになればと願い、活動を継続してきました。
今年で活動11年目、現在は約9000店舗の全国の花店が参画する一大プロモーションです。2月14日当日の男性(全国20〜49歳)の花購入率は、スタート当初から比較して6倍に広がり、全国の花店の現場では年間を通じて30代40代の男性客が着々と増え、花贈りが定着してきました。
そして、ここ数年で20代の男性が全国平均で10%を超える高い割合で花を贈りはじめているという調査結果を受け、これから先の10年を見据えてコミュニケーションのターゲットを若年層(22〜35歳)にシフトしました。今年は実働部隊も若返らせ、若い感性でビジュアルも刷新しました。
また、男性女性といったジェンダーは関係なく、大切な人にもっと気軽に自由に花を贈ろうというメッセージを込めて、キャッチフレーズも「#花は自由なラブレター」にリニューアルしました。花はいろいろな形の愛を応援するということを伝え、時代や人々の気持ちに寄り添う新しいプロモーションへと進化させています。
フラワーバレンタイン
活動11年目で、現在は約9000店舗の全国の花店が参画する一大プロモーション。今年は若年層向けにビジュアル、メッセージを刷新した。
現在の花の消費は50代以上の女性が支えています。20〜40代の花の購入が極端に少ない状況は、共働きが増え、仕事や家事・子育てで過度に忙しい女性が増えたことも相関していると思われます。このような社会環境下でも、20〜40代女性に“今”花に触れる機会をつくらなければ、将来的に花の消費拡大や花のあるライフスタイルを実現することは難しい。そのため協議会としては、花の潜在客層、若年層に向けた施策を行っています。
そもそも花き業界の中に消費者に関するマーケットデータが少ないという問題が...