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コロナで動く 消費のタイミング

『贈り手』と『受け手』の視点、贈答文化から新たな消費を生み出す

島永嵩子(神戸学院大学)

古来から存在する、消費を生み出す贈答文化。この市場は大きく、タイミングを捉える販促活動において重要だ。消費文化を研究する著者が、企業が知るべき点を解説する。

贈答市場を捉えるためには、贈り手と受け手の視点をふまえることが有効だ。

従来、贈答文化といえば、お中元やお歳暮などといった儀礼的なものが主流であった。近年では、イベントにちなんだギフトや個人間で交わされるカジュアルギフトへと徐々にシフトしてきている。コロナ下で新しい生活様式が求められるいま、贈り物に対する意識も変化しつつある。

「ステイホーム」という特殊な生活環境のなか、「巣ごもり」や「おうち」「人とのコミュニケーション」といったキーワードが多く見られるようになった。対面を避けてネット購入が進む一方で、人々はつながりや絆を求めて、贈り物に絆を育むコミュニケーションツールとしての役割を期待するようになってきているのである。

贈答といわれる消費行動には、一般的な消費行動とは異なり、ギフトの贈り手(購入者)と受け手(消費者)という2つの主体が存在する。コロナ下で売上が低迷する中、企業は、この2つの主体に対してどのようなアプローチから消費を喚起することが可能であろうか。

企業が把握すべき2つの視点

本稿での議論の前提として、まず、贈り手という視点から考える場合、贈り手は、受け手の趣味・嗜好や状況を理解した上で贈答を行うことが望ましい。とはいえ、実際に贈るとなると、何を贈ればよいのか悩む場面によく出くわす。そうした場面では、贈り手の抱える不安や不満に寄り添ったマーケティング活動による支援が重要となるだろう。

次に、贈答においては、もう1つの主体である受け手の視点から贈答文化を考えると、ギフトによる消費のポテンシャルの高さが見えてくる。

1つ目に、贈り物には「もらうといつか返礼しなければいけない」という互酬性に基づく「お返し」の義務感が生まれる。そのため「お返し」という仕組みをうまく活用することで、新たな購買意欲が喚起され、さらなる市場の広がりを見込めるだろう。

2つ目に、受け手が贈られたギフトを気に入れば、その体験は今後、自身が他者に贈り物をする際の新たな参照基準となりうる。さらにそれだけでなく、SNSなどを通じて広く社会に発信し他者と贈答体験を共有、拡散することも期待される。

3つ目に、1つのギフトがきっかけで、受け手のライフスタイルを変えてしまうほどの影響を及ぼすことが現実に起こりうることである(いわゆる「ディドロ効果」)。

上記の贈答文化における特徴を踏まえて...

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