店舗の顧客接点の拡張、体験価値向上のアプローチのひとつとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まる。DX推進に必要な考え方について聞いた。

対談は2020年12月22日に開催された「小売店舗のDXカンファレンス」(宣伝会議主催/オンライン配信)で行われた。
店舗はブランド表現の最前線
──パルコがコロナ禍で取り組んだDX施策を教えてください。
林:第一次緊急事態宣言下で店舗の休業を余儀なくされた中でも、出店していただいているテナントとお客さまをつなげる環境を維持するべく、オンラインを積極的に活用しました。
まず行ったのはオンラインチャネル「PARCO ONLINE STORE」の活用です。渋谷パルコに出店しているショップに声を掛け約30店が参画しました。2020年9月からはライブコマースを活用したライブショッピング企画「PARCOオンライン商店街」を開催しています。ショップスタッフを中心に、オンラインストアでも店頭での接客により近い形で商品を丁寧に説明する場を設けました。10月には4日間連続で中国をはじめとする海外のお客さまにも向けた越境ライブコマースイベントも開催しました。
また、ECを利用しにくい飲食のテナントに向けて、クラウドファンディング「BOOSTER(ブースター)」での販売支援をしました。さらに、エンターテインメント施設「PARCO MUSEUM TOKYO」では、2020年6月以降のイベントからオンライン展示を併催。3Dビューで実際に会場にいるかのように鑑賞できる機会を創出しました。これらの施策は、お客さまとのニューノーマルなコミュニケーションとして引き続き実施していく予定です。
──丸亀製麺のDX推進組織の立ち上げについて教えてください。
神谷:2020年4月にCX推進部を立ち上げ、7月から本格稼働しています。ポイントはマーケティング統括部というマーケティングの本部内にCX推進部を据えた点です。CX推進部では、店舗接客でブランド強化するチームと、OMOでデジタルと店舗を結ぶ施策をするチームに分けています。数年前からこのような構想が立ち上がっていましたが、コロナを受けさらに進んだという形です。
──DX施策を推進する中で、店舗の役割はどのように考えていますか。
林:ショッピングセンターの役割は、出店している多くのブランドや商品・サービスの中から、接客という重要な顧客コミュニケーションを通じて、信頼できる他人に「肩を押してもらえる」安心感を得られることだと思います。一方、ショップの役割は、ブランドを認知・体験する場所、つまり、お客さまとブランドのマッチングプラットフォームです。ショッピングセンターはその体験が複数できるので、より個々のブランドとお客さまとの絆が強固になる場所であると考えます。
神谷:我々は、店舗がブランド表現の最前線だと考えています。丸亀製麺を知って実際に来店したお客さまが、丸亀製麺ブランドを体験し一番感じていただけるのはやはり店内だからです。
マーケティング統括部の中にCX推進部を置いたのは、認知・来店・再来店という...