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販促会議 企画コンペティション

「なぜ販促コンペに協賛したのか?」協賛企業と審査員に聞く

藤井一成氏(ハッピーアワーズ博報堂)、川部篤史氏(アイセイ)

2020年4月から9月にかけて開催された第12回「販促会議 企画コンペティション(販促コンペ)」。過去最多の応募総数の中からグランプリを受賞したのは、主力のカラーコンタクトレンズ「エバーカラー」を発売するアイセイの課題に応募された企画「キャッツアイセイケース」だった。ここでは、その協賛企業であるアイセイの川部篤史氏とハッピーアワーズ博報堂の藤井一成氏による「プランニングアイデアセミナー」をレポート。第1部では、藤井氏が販促コンペについて解説。第2部では、2人が販促コンペの協賛の価値について対談した。

昨年9月に行われた販促コンペ贈賞式。グランプリの受賞者とアイセイの川部氏。

プロモーションの役割とは

藤井:最初に私のプロモーションの考え方についてご説明します。プロモーションというとお客さまに製品を売るための仕事と思われがちですが、私は「お客さまと親密な関係性を築く仕事」と捉えています。良いものをつくって良い宣伝をすれば売れた、製品主導の時代においては、プロモーションは、①製品を②広告して③売る、という一連のサイクルにおいて、③の位置、つまり終着点にあるものでした。

ところが近年はどの商品も成熟化し、また生活者の価値観も変化したことにより、その機能性よりも購入した商品がどんな体験価値をもたらしてくれるかが、ブランド選びの基準になっています。売った後に、どのような関係性が築かれるかがブランド選びの重要なポイントになる今、プロモーションには、お客さまとの関係性をつくる、その起点としての役割が求められるようになりました。

そもそも企業は、生活者の暮らしを豊かにするために製品やサービスをつくっています。だからこそ、売りっぱなしの販売促進ではなく、手にしてからどれだけユーザーの生活を豊かにできるかという視点が重要です。「プロモーション=お客さまとの関係性をつくる仕事」と考えるようになると、企画が一気に変わってきます。そして、その戦略や企画が成功すると、ユーザーのその後の買い替えや買い増しの機会にまで効力を発揮する可能性までも見えていきます。こうした変化は、販促コンペの中にも起きてきていると感じます。

審査のポイントについて

コンペの審査においては「その企画で本当に人は動くのか?」を、①リアリティ、②フィジビリティ、③クリエイティビティの3つの観点から評価しています。

欲望や本音が絞り出されているか、インサイトをしっかりつかめているかというリアリティ。そして法令、薬機法や景品表示法などの規制を理解して提案しているかがフィジビリティ。そして最後に、「そうかこんな手があったんだ!」というアイデア、クリエイティビティです。

審査会は、広告会社のプランナー、事業者、メディア、PR、流通など多様な業界の方で構成されており、立場の異なる視点からの評価をぶつけ合って徹底的に議論しています。

アイセイが協賛した理由

藤井:協賛の背景を教えてください。

川部:販促コンペに協賛したカラーコンタクトレンズは、もともと医療機器ではなくファッション雑貨として始まっており、最初の頃は粗悪な商品も出回っている状態でした。現在は高度管理医療機器として登録をしないと販売できなくなりましたが、昔の悪印象が強いせいで、未だに眼科医の方々や親御さん世代には「カラコンってどうなの」と良い印象を持たれていないのが実情です。

加えて、ユーザー自身が1day(1日用)のレンズを何日も使用しているような実態もあるため、当社としても正しく安全に使っていただけるよう様々な啓発をしてきました。しかし正攻法ではなかなか響かず、「正しいケアをする方がユーザーにとっても望ましいと思ってもらいたい、そのためにプロの力を借りてクリエイティブジャンプをしたい」と考えていた矢先の協賛のお話でした。

藤井:アイセイさんのオリエンシートに書かれている「正直めんどうなんだよね」の一言は、使用者の本音=インサイトを明確に謳うたったコピーですよね。メーカーから、こうしたネガティブなユーザーインサイトを発信することはなかなか勇気がいることだったのではないかと推測するのですが、この一言があったことでクリエイターはどこをジャンプすればいいのかが明解になった。この課題設定は、すごいなと思いました。

川部:オリエンシートには他にもいくつかの案がありましたが、「クリエイターの皆さんに私たちが本当に解決してほしい課題を伝えるには、ここまで言い切らないといけない」と思い、この案に決定しました。

受賞作品決定の基準とプロセス

藤井:実際に販促コンペで御社に集まったアイデアの中から、協賛企業賞を決定したプロセスについて教えてください。

川部:まず審査のメンバーには、マーケティングと営業の各エースクラスの社員をアサインした上で全社に募集をかけ、結果的に15人のプロジェクトメンバーで進めました。審査基準には①独創性 ②実現性 ③合目的性 ④収益貢献性 ⑤アイセイ性 ⑥インサイトという6つの項目をつくって評価し、総合計が高いものと、オリジナリティやインサイトの得点が高いものとを抽出してそれらを中心に議論しました。

藤井:企画を考えるにあたって気にすべきことが全て審査基準の中に盛り込まれているように思います。特にこの⑤アイセイ性は、大きな成果をだすことだけを求めるのではなく、会社として「正しい方向に跳ぶ」ためにすごく大事なことだと思います。一方で、これを基準にするには自分たちがどの方向に向かおうとしているのかを社員自身が認識していないといけませんよね。ここはどうベクトルを合わせていったのですか。

川部:それについては、当社の社名の由来「アイセイ=愛情と誠意」が根っこにあったと思います。愛情と誠意があるかどうかという観点でアイデアを見た時に、選べないものも出てきました。

藤井:なるほど、社名そのものが北極星なんですね。今回実は、協賛企業賞と我々が選ぶグランプリが同じで、この稀な一致に私たち審査員もざわつきました。

川部:自社では超えられなかったギャップをアイデアで超えている企画を大事にしたい、インサイトを掴んだ企画を大事にしたいという足場が審査員の皆さまと一緒だったから、結果的に選んだ案も同じものになったのかもしれません。

前回、グランプリと協賛企業賞を同時受賞した「キャッツアイセイケース」の企画書。

アイデアを公募するメリット

藤井:コンタクトにまつわる一連の日常生活において、レンズケースが今まで全くの盲点だったこと、こんなところに革新のポイントがあったことに我々もハッとしました。御社はレンズケースをどのように捉えていましたか。

川部:「レンズを正しく使っている前提で、必要なもの」という位置づけで、これそのものがレンズを正しく使うことをサポートするものという観点は持ち合わせていなかったと思います。実は別件で新しいケースの試作品開発にも取り組んではいたのですが、やはり研究者と考えるとクリエイティブジャンプがありません。販促コンペの集まってきた作品を見ると、クリエイティブジャンプの効いた、全く毛並みの違ったものが出てきたので、プロのクリエイターやプランナーはちゃんとアイデアで応えてくれるんだなと感じました。

藤井:全応募作品を見られた感想はいかがでしょうか。

川部:似通った提案は結構ありました。似た案に対してどう整合性をとるかを考える際に、10個の軸に類型化してそこの中でのバランス取りをしました。協賛企業賞は、最終選考の5案を選んでそこに対して追加プレゼンをお願いできるんですよね。その5案を選ぶ際、「類型自体が良く、似ている案同士」を選んで差異を深く聞き出すのがいいか、「類型からして別々のもの」を5案選んで聞いてみたほうがいいのか、そこは意見が割れました。最終的には同じ類型のものからは1つを選びきった上で、別々の類型のものを5案選ぶことにしました。

藤井:グランプリ作品の「キャッツアイセイケース」には社内外から反響があり、また御社内の審査メンバーもこの審査を通じて大きく変わられたと聞いています。世の中の課題が複雑になっていく中、自分たちだけで解決せずに、外の人たちとうまく共創しながら価値をつくっていくというメソッドそのものを、現場の方々が学ぶ機会にもなったのではないでしょうか。

販促コンペからイノベーションに

川部:実は「キャッツアイセイケース」は早々に現物の開発を進めています。一度自分たちでできるところまで形にしてみて、ライトの照度不足や電源の取り方など具体的な課題を抽出し、ケア用品メーカーの開発部門などにも協力要請をしています。

藤井:構想から実現までをどう埋め合わせていくかが次のステップで大事になってくるところですが、紙に書かれたアイデアが、このように物としてカタチになってきているのは感動的ですね。今まさに開発段階とのことですが、どんなご苦労がありますか。

実は、今回もブラックライトを購入して、汚れが浮かび上がる程度を確かめた審査員がいました。審査会では、様々な面からフィジビリティを確認するのですが、専門的な技術面に関しては、どうしても検証しきれないところがありまして。

川部:ちょうどそのブラックライトの部分でして、実際に光を当ててもなかなか汚れが出てこないんですね。それが何故なのかを解明しているところです。仮にブラックライトだけで浮かび上がらないとしても、ご提案者様のアイデアは核として大事にしながら足りない部分を補っていこうと考えています。

藤井:集まった企画がきっかけとなって新しい価値やイノベーションが生まれる。そうした契機になるということこそがコンペの役割だったのかなと、お話を聞きながら思いました。

アイセイはすでにグランプリ作品の実現に向けて開発を進めている。写真は研究中の試作品。





【審査員】
ハッピーアワーズ博報堂
代表取締役社長/クリエイティブディレクター
藤井一成氏

【協賛企業】
アイセイ
執行役員 新規事業開発管掌
川部篤史氏

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