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REPORT

「守破離」の実践がキャンペーンを成功に導いた

大王製紙 「アテント」

変化が叫ばれる時代、従来の“型”は通用しなくなったのか。“型”を守り、磨き、発展させる「守破離」を実践してきた大王製紙「アテント」チームの取り組みにフォーカスした。

大王製紙 ホーム&パーソナルケア部門 マーケティング本部 本部長 坪田明晃 氏

紙おむつの存在意義を問う

大王製紙は大人用紙おむつブランド「アテント」のプロモーションの一環で、「もっといいパンツになる。」と題したキャンペーンを2020年8月に実施した。このキャンペーンにいたる道のりを、マーケティング本部を率いる坪田明晃氏が解説した。担当した4人のメンバーは、「今回のキャンペーンに参加するまではコミュニケーションやキャンペーンに関係したり、ブランドについて考えたりしたことを主たる業務として経験したことがなかった」(坪田氏)。一連の取り組みは、ブランドチームの成長の機会にもなったようだ。

2020年8月4日、新聞15段のティザー広告掲載からキャンペーンを開始。同月22日にはプレスリリースを配信し、ブランドキャラクターの草彅剛さんが登場する15段広告を掲載。22日~23日に放送された「24時間テレビ」(日本テレビ系)に13本のテレビCMをオンエアしたことも話題となった。

Twitterのアカウントを開設し、「#常識をはきかえよう」のハッシュタグで消費者の思いを投稿してもらうなど、オープンなコミュニケーションを促した。テレビCMやツイートを見ることができるスペシャルサイトは開設後にアクセスが集中し、一時サーバーがダウンするほどだったという。

キャンペーンはテレビCM放送日と翌日のリアルタイム検索ランキング、Yahoo!トレンドランキングでともに4位、CM人気ランキングでも1~4位を独占。情報番組や新聞にも取り上げられたほか、CM総合研究所のCM好感度ランキングで生活雑貨部門の7位になるなど多くの反響があった。消費者からはTwitterへの投稿だけではなく、直筆の手紙も届いたという。

キャンペーンの狙いは、「超高齢社会」ともいわれるなかで大人用紙おむつを自分ごととして考えてもらい、そのための一石を投じるブランドになること。キャンペーンを通じて社会的な意義を果たすことで「大人用紙おむつをオープンな存在にし、国も推奨している家族での介護から地域での介護へ、という流れに貢献できると考えました」(坪田氏)。

キャンペーンのシンボルマーク。「かくさない パンツになろう。」という言葉から始まるブランドのマニュフェストも公開した。

三つの型と一つの呼吸

キャンペーン実施までの道のりは、ブランドチームの一員でもあった宇都秀和氏も登壇し、企画のプロセスを振り返りながら解説した。

話はプロジェクトが立ち上がった2019年4月当時にさかのぼる。それ以前に広告会社に渡していたブリーフシートを見た坪田氏は「要望がてんこ盛りすぎて、提案する広告会社も困るのではないかと思った」と振り返った。広告会社が作成する企画コンテの提案は、当然ながらブリーフに記された課題を解決するためにある。どの課題にフォーカスしていいか分かりにくく、当時、新しく結成されたブランドチーム内でも共通認識が得られていなかった。

4月に組織されたチームは、それまでコミュニケーションやキャンペーンの企画に本格的に携わったことがないメンバーからなっていた。

坪田氏はコミュニケーションを設計する上で重要なポイントを、人気漫画『鬼滅の刃』に登場する技になぞらえて「三つの型と一つの呼吸」と紹介した(図)。なかでも最も重要な「一の型」はブランド・レゾンデートル(存在意義)を確立させることだという。

コミュニケーションを設計する上で重要な「三つの型と一つの呼吸」

坪田氏は「マーケティングの教科書に載るようなブランドはきちんとした目的(パーパス)を持って運営されているかも知れないが、私の経験上...

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