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売上を伸ばすための基礎知識 販促の基本

自社商品を売り込むためには小売企業の方針を知ることから

高田英男 (Mission01代表)

自社の商品を流通に扱ってもらうためには、小売企業ごとの販売方針や注力ポイントを把握した上で、自社商品の特徴やアピールポイントを棚卸しすることが重要。販路戦略を改めて見直したい。

自社の商品を誰に売るのか。相手を知り、店舗ごとの特性に合わせた商品提案が重要(写真はイメージ)。

全国の中小企業、小規模事業者のための販路開拓セミナーや個別相談、魅力アップスクールなどで見る商品の中には、魅力にあふれた掘り出し物の素晴らしい商品も少なくない。しかし、ほとんどの商品は本来売りたいはずのスーパーや百貨店、コンビニの棚に並ぶことはなく、外食レストランのメニューに使われることもない。

販路戦略はなぜ必要か

その最大の理由は①売りたい相手との商談機会を得られない、②商談機会を得たにもかかわらず商品のプレゼンテーション能力に欠け、商品の魅力を最大限に伝えきれず、商談成約に至らない、ことが挙げられる。

①商談機会を得られない、に関しては知人の紹介や銀行のコネを使う方法もあるが、あまりお勧めできない。バイヤーは「自分で売れる商品を見つけたい」「上司や銀行のコネを使う取引先はあまり信用できない」と考えることが多いからだ。それよりも最近では各地の商工会議所が行っている逆商談会に参加することがお勧めだ。

これは国内外から百貨店、スーパー、通販、専門店などの大手流通業がブースを構え、売り手企業は商談を希望するブースに訪問し、自社商品を直接売り込むことができる「逆」見本市形式の商談会である。

商談時間は約15分と制約はあるが、アポイントの取りにくい大手流通業のバイヤーに1日で複数社、直接売り込みを掛けることができる。さらに百貨店やスーパーのバイヤーとの商談を通じて、今のニーズやトレンド、自社商品の改善点や問題点、あらたな商品開発のヒントを得ることもできるというメリットもある。

この逆商談会は毎年秋に開催される大阪商工会議所の「買いまっせ!売れ筋商品発掘市」(2020年は3密回避のため、9月から11月にかけて日程を分散して開催)や、2021年3月16日に開催される名古屋商工会議所「売り込み!商談マーケット」がある。既に実施された「買いまっせ!売れ筋商品発掘市」では毎年70社を超える大手流通業がブースを構え、300人以上のバイヤーが参加する。そこへ全国から800社以上の企業が自社商品を売り込みに来るというダイナミックな逆商談会になっている。

2016年のデータでは当日商談数6085件のうち1323件、21.7%が商談継続・成約可能性あり、という好結果になっている(図1)

図1 逆商談会の成約例
島根県出雲市の出雲国大社食品は地元の生魚を使用した蒲鉾や天ぷら、ちくわなどの練り製品を製造する。味や品質にこだわった商品作りを行っている。また、保存料や化学調味料不使用の商品作りに注力する企業だ。島根県庁からの紹介で「買いまっせ!売れ筋商品発掘市」を知り、幅広い流通業と直接商談ができる点や、自社でアポイントを取って商談を行うよりも、効率的に商談ができることを魅力に感じたため参加を決意し、同発掘市を契機に、多くの企業と成約をし、継続的に参加をしている。

このような商談会に参加するなど、何らかの方法で商談機会を得たとしても商談成約に至らない最大の問題は実は「事前準備」にある。

小売各社の戦略を調べる

その「事前準備」で最も重要なことが「販路戦略」だ。販路戦略とは簡単にいえばどんな企業に自社商品を取り扱ってもらいたいかを明確にすることである。

食料品でも取り扱い企業は百貨店やスーパー、コンビニ、生協だけでなく通販やドラッグストア、ネット販売店、最近ではホームセンターや家電量販店まで品揃えし、商品の調達先を探している。しかも同じスーパーやコンビニという業態でも各社取り組み方針は大きく異なっている。特にここ数年は小売業の売上低迷と利益の減少により、各社「今のままではダメだ!」と新たな取り組みや方針の転換を行ってきている。

そんな小売業に対し従来どおり自社商品の味の良さや安全性や価格面での優位点を自分本位に説明するだけでは相手の共感を得られるはずがない。どんなスポーツでも今日対戦する相手のことを事前リサーチせずに挑むことは絶対にない。遊びのゴルフですらプレイするコースの特徴やコースレイアウトの下調べは多くの人がやっていることだ。にもかかわらず自分の商売や従業員の生活まで掛かっている自社商品の売り込みに行くのに相手のことを知らなすぎるのが一番の問題点なのである。

例えば同じコンビニでも、ローソンは「夕夜間元年」という方針のもと夕夜間強化を最大のテーマとしている。今までの30〜40代男性顧客だけでなく、働く主婦のための「時短効率ママ」に対する簡便性重視の品揃え強化や、50〜60代男女を「上質プレミア世代」と位置づけその層を取り込むために具材や海苔、ご飯にこだわった「野沢菜ちりめん玄米100%おにぎり」などを商品開発してきている。

また従来のメイン客層である30〜40代男性に対する認識も「大盛り、ガッツリ系メニューを好む食欲旺盛タイプ」という認識から「メタボを気にし、女子的志向の強いサラリーマンタイプ」などに認識変更し、健康や自分へのご褒美商品を増やしてきている。こういった取り組みのもとでは、夕食づくりに手間のかからない簡便性商品を開発している生産者や、原材料や製法にこだわり、健康アピールができる商品を製造している事業者にはチャンスがありそうだ。

ファミリーマートでは「お母さん食堂」シリーズの品揃えを強化し、女性の社会進出や共働き世帯の増加、単身世帯の増加に対応する品揃え充実を図っている。そこでは食卓出現率の高い焼き魚系の惣菜やワンランク上のパウチ惣菜を製造している事業者にチャンスがありそうだ。それ以外にもサイドネットに掛けている小袋菓子が大きく売上を伸ばしていることから、袋がつながった状態で販売できるカレンダー型商品を製造しているメーカーは売り込みの大チャンスだ。

「変化するお客さまのニーズが...

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