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実店舗・EC 衝動買いを生み出す秘訣

価値と出会える店舗づくり、VMDの考え方

深澤智浩(深澤企画コンサルティングオフィス/マーケティング研究協会 顧問)

外出控えが続き、企業は店舗の価値を考える機会になった。本稿では、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)をテーマに、顧客が価値と出会える店舗づくりについて筆者が解説する。

2020年1月、私はあるメーカーが主催する展示会の企画施工のために、中国沿岸部の都市に滞在しておりました。帰国後1週間が経つ頃、中国武漢で発生したとされる新型コロナウイルスの猛威により、私たちの日常は、半ば行動の自由を奪われるかの如く「新たな生活様式」によって大きな変化が起こっていきます。

政府による不要不急の外出制限の自粛、また顧客自身の感染、接触や飛沫防止意識の高まりから顧客の買い物頻度の減少、店舗での滞在時間の減少、さらに接客サービスの機会も減少しました。また購入店舗の選択においては、自宅から近く短時間で早く買い物ができる近・短・早を実感できる店舗へのシフトが起こり、リアル店舗からECサイトでの買い物への移行も急速に高まりを見せました。

「何かを変えなければ」「新しいことをしなければ」「オンラインやデジタルを強化しなければ」「顧客体験を充実させなければ」……。このコロナ禍において食品を取り扱う以外の店舗では、その存在・存続をかけ、何かにすがるような思いで新しい買い物の場のあり方を体現できる店、「新しい販売・販促様式」を実現できる店舗のあり方を考えたのではないでしょうか。

しかし、コロナ禍前に少し遡って思い起こせば、それ以前から、店舗はショールーム化し、衝動買いは減少、計画的に購買する商品に関してもECサイトでの購入率は年々高くなる一方でした。

近年、インバウンド消費に支えられ小売業全体の成績自体は悪くなかったものの、その中身を見れば、モノを売るためだけに存在する場としての店舗はコロナ禍以前から本質的に変わらなければならない状態であったはずなのです。

衝動買いは減ったのではない?

現在、小売に携わる我々がすべきことは何であるのか?この不要不急の状況下においても、お客さまが店舗を訪れる目的は「不足・不満・不安・問題」の解消と「理想」を叶えることであり、店舗に行けばそれが実現する可能性があると期待感を持ち、店舗の訪問欲求要素としてわざわざ店舗に足を運んでいただいています(図1)

図1 店舗の役割とは

特に、思いがけず不満や不足の解消、さらには理想を実現できる情報や商品に出会えると、人間の脳は生きる上での活性意欲となるドーパミンを、その報酬として多く分泌します。そのため、このような状況下においても、出会いさえすれば「買いたい」と思うのです。

しかし、そういった予期せぬ出会いは減っています。その理由は、古くからの小売習慣・商品提案の型にあります。実際の買い物現場では売り手が販売したいモノを売場で広げ、商品を積み、さらに売場が目立ち、商品価値が分かりやすくなるようにとたくさんのPOPを掲出し、価格を下げて販売します。

これは、いつか購入する可能性のある商品の購買タイミングを早めるだけの手法であり、顧客が価格に満足できなければ、購入を決断できないといった、売り手が提供したい「モノとの出会い」を優先するだけの売場づくりの型となっているのです。

店舗に情報や商品があるのは当然ですが、顧客がその価値に気づき、納得していただくことができなければ、現状の売場づくりの型は極端にいえば顧客にとっての出会いの弊害でしかありません。ECサイトに慣れ親しむ者にとって、自らに不要な情報と商品があふれるように見える店舗は、商品を探すのも時間がかかる、複雑で面倒な場所となっているのです。

このタイミングで売場づくりの型を、「モノを売るだけの場」から「価値と出会える」型に変えていきませんか?今後の店舗の存続に関わる重要な取り組みになるはずです。

衝動買いを生み出すVMD

ここまで問題提起をしてきましたが、ここからは、すぐに取り組める衝動買い・ついで買いを促す「価値と出会える売場づくりの型となるVMD」について記載していきます。

まずVMDに関しては、店舗コンセプトに基づいた店舗構築と、その継続的な実践を目的とした店舗戦略が重要になります。具体的な取り組みとして、来店のきっかけをつくるVP(ビジュアル・プレゼンテーション)、おすすめや人気商品をアピールするPP(ポイント・プレゼンテーション)、商品を手に取りやすくするIP(アイテム・プレゼンテーション)という3つのスペースから、顧客に対して適切な商品の提案と展示、そして情報を伝えることを目的としています。

アパレルや雑貨店においては、ショーウィンドウやマネキン、また商品展示台や展示テーブルなど売場内にVMDを実施する機能が設備されているため、逆に顧客に対する提供価値を考えることなく商品の組み合わせや展示手法などを行っているケースが見られます。作業的に、デコレーションとして...

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