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「ライバルはプレミアム」のコンセプトが生まれるまで

アサヒビール 「アサヒ ザ・リッチ」

新ジャンル「アサヒ ザ・リッチ」ヒットの背景には、徹底した顧客理解によるインサイトの発掘があった。ブランドマネージャーの岡村知明氏が商品開発の背景を明かした。

新ジャンルの市場は激戦区

「アサヒ ザ・リッチ」は「まるでプレミアムビールのような新ジャンル」というコンセプトで、2020年3月に発売した新商品です。アサヒビールの過去10年間の新商品の中で、最高売上を更新するなど、おかげさまでご好評をいただいます。

ビール類のカテゴリーは、日本の酒税法上で「ビール(プレミアムビールも含む)」「発泡酒」「新ジャンル」の3つに分かれています。主に原材料として使用している麦芽の使用比率によって分類され、それに応じて課される酒税が変わる構造です。ビール(プレミアムビールも含む)は麦芽使用率50%以上のもの。ビールよりもお買い求めやすい価格の発泡酒は25%未満のものです。そのさらに一段下の価格帯のものが新ジャンルです。

最も価格帯の安い新ジャンルカテゴリーは、いまや家庭内市場の約半分のシェアを占め、各社とも非常に積極的に展開しています。「アサヒ ザ・リッチ」も新ジャンルのカテゴリーの商品です。

お客さまの心が動く商品を

「アサヒ ザ・リッチ」について、どのようにインサイト探索からコンセプト開発を行ったのかをお話しします。前提として、アサヒビールのマーケティング方針は「お客さまの心を動かすことに集中する」ことにあります。すべての接点において魅力あるブランド価値を一貫性を持って確立すべく、お客さまが主役の統合型のマーケティングを実施しています。「本当にお客さまの心が動く」新商品をつくるためには、徹底したリサーチでお客さまのインサイトを明らかにした上で、商品コンセプトを開発することが必要です。

インサイトとは、「〇〇と思っている人に△△と伝えると、買いたくなるもの」で、お客さまの心を動かし実際の態度変容につながるものであると定義しています。

ターゲットユーザーのインサイトを明らかにするためのアプローチ方法でメインに行っていることは、「デプスインタビュー」と呼んでいる、N=1の徹底的なインタビューです。担当者自ら直接ターゲット一人ひとりに話を聞き、お客さまからの何気ない一言や表情・しぐさ、言葉の奥の本音などを直接感じ取ることで、ターゲットを理解するものです。そこから得た気づきは、その後に定量調査で検証し、確信へと変えていくというステップを踏みます。

「アサヒ ザ・リッチ」では、ターゲットを「新ジャンルにコク・本格感を求める新ジャンルユーザー」に設定し、徹底的なデプスインタビューを行いました。

そこで明らかになったターゲットの本音・気づきは、商品開発におけるキーポイントとなりました。まず、ターゲットユーザーに新ジャンルについての意見を聞いたところ、「最近の新ジャンルは本当においしい」「ビールに近いレベルで十分満足している」「最近の新ジャンルは、新ジャンルと言わずに出されるとビールと思うぐらいよくできている」というポジティブな回答をいただきました。

しかし、「値段がビールと一緒でも、それでも新ジャンルを買いますか」と聞くと、「そりゃ毎日ビール買うでしょ」「やっぱりビールは違う。でも実際高いからしょっちゅう買えないし、ましてやプレミアムビールなんてなおさら」という本音が出てきます。つまり、結局消費者は、ビールやプレミアムビールへの憧れを強く持っていて、新ジャンルはビールには及ばないし、ましてやプレミアムビールにはほど遠いと思っているということです。

加えて「新ジャンルってビールに比べて雑につくられていますよね」という声もあがりました。この声はメーカーとしてもはっとした意見でした。決して雑につくっているわけではありませんが、お客さまの意識としてそういうふうに新ジャンルを見ていることが分かったのです。逆にいえば、この意識を逆手に取ることができれば、大きなチャンスになるのでは、と感じたことも...

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