オンラインイベントを成功に導くには、リアルと同じ体験の提供にこだわらず、目的からストーリーや演出を組み立てるべきだという。イベント制作大手のテー・オー・ダブリュー(TOW)に聞いた。
TOWは緊急事態宣言解除後の2020年6月、「TOW NEW NORMAL EVENT」と題して、コロナ禍を踏まえたイベント開催のポイントや心構えをまとめて自社サイト内に公開した。ウェブサイトは大きく2つに分かれている。一方は感染防止策を施したリアルイベント開催のためのガイドライン、他方はニーズが急増するオンラインイベント開催のノウハウだ。
クラスターの発生が連日話題に上る中で、人が集まるイベントのほとんどが中止または延期、開催方法の変更を余儀なくされた。その一方で、毎年6月に集中する株主総会など、感染防止策を施した上で開催されたものもある。担当者は新規感染者数の推移をうかがいながら、開催の可否を判断している状況だろう。同社が公開しているリアルイベントのガイドラインでは、政府や行政機関の指針に沿った上で、人数制限や換気、検温などイベントによる感染拡大リスクを最小限に抑えるための要点を紹介している。

TOWが開設した特設サイト。感染防止対策を施したリアルイベントとオンラインイベントの双方のポイントをまとめている。
多様なイベントがオンライン化
「コロナ禍で活動が制限されていても、企業活動において『体験』は必要との考えから、こうしたサイトを立ち上げてサービスを提供しています。リアルとオンライン双方のプロデュースができることが強みなので、合わせて出していくことがTOWらしいと考えました」とTOWインタラクティブプロモーション室の川嶋信俊氏は話す。
オンラインイベントの一例を図1にまとめた。記者発表会のように欠かせないものは早くから多くの相談が寄せられている。プロモーション領域では、ファン層とのエンゲージメント強化を目的としたファンイベント開催の引き合いが増えている。
「Zoom飲み」ともいわれ市民権を得つつあるオンライン飲み会をメーカー主催で開くものや、広告に起用したタレントのトークショーなどのコンテンツを限定配信するもの、自動車メーカーによる特定車種のファン向けイベントなど様々。最近では、菓子や飲料など低価格の商品でもファンイベントを行うケースが増えたという。
すそ野広がるファンイベント
「それなりのコストを要するファン向けイベントは、かつては自動車など高単価の商品でないと投資に見合わなかったのかも知れませんが、オンラインを活用することで、すそ野が広がったと感じます。ターゲット層や価格帯によらず、あらゆるブランドでファンとのエンゲージメントが重視されているのではないでしょうか」(同)。
Instagramなどを用いた動画のライブ配信とECを組み合わせて商品を売る「ライブコマース」も注目されている。実店舗での販売に苦慮する中で、新たな販売方法を模索するこうした動きは今後も続きそうだ。
ビジネスイベントについての相談も多い。大型イベントスペースを使う見本市や展示会、ホテルの宴会スペースやホールを使った講演会などが軒並み中止または延期となり、その一部はオンラインに移行した。ウェビナーや仮想の展示ブースを設けた展示会イベント、販売代理店などを招待するプライベートショーなど多岐にわたる。
社内活性化やスタッフの動機づけなど、インターナルコミュニケーションを目的としたイベントのオンライン化も進んでいる。社内外の優秀者を集めて表彰するようなクローズドのイベントがその一例。社員総会から販売代理店の優秀者表彰、特定技能の...