中小から大企業までが実施しているダイレクトメール。適切な送り方をすることで、顧客のリピート化に大きく役立つ。全日本DM大賞審査員でもある著者が、押さえておくべき点を解説する。
コロナ禍において消費者の日常の行動が様々な制限を受け、いわゆる新しい生活様式が求められる中、企業活動においても同様の制限がかかっています。現実的に新規の顧客を獲得することが難しい状況で、企業はいままで以上に顧客の再購入・再来店、いわゆるリピーターの囲い込みで売上を確保することが重要となっています。
既存の顧客とつながり再購入・再来店をしてもらうために企業は、メディアやツールを駆使し様々なプロモーションを実施しています。多くの企業でCRMプログラムやロイヤリティプログラムを充実させる一方で、SNS上に企業アカウントを開設し、継続的に情報発信をすることで自社ファンを増やし、つなぎとめ、再購入・再来店を促進させる動きも多く見られます。
そんなデジタルを活用することがプロモーションの主流ですが、リピーター施策においてはダイレクトメール(以下DM)も活用されています。
DMのメリットとしては
● デジタル媒体より顧客への到達率や開封率が高い
● 紙媒体であるため保存性が高い
● 多くの情報を一度に送れる
などが挙げられます。
一方でDMのデメリットとしては
● リストがないと送ることができない
● メルマガなどのデジタル媒体よりコストが高い
● 企画から発送までの時間がかかる
があります。
特にリピーターのプロモーションにおいてはDMの持つ到達率や開封率の高さは大きなメリットです。また日常で郵便物を受け取る機会も少なくなりDMが送られてくること自体が珍しく、興味を引きやすいというところも見逃せません。
考えるべき5:2:2:1の法則
実際にDMの企画を考える上で大事なことは何でしょうか?
最初に覚えていただきたいことは、「5:2:2:1の法則」です。この法則はDMを企画する要素の重要度の割合を指していて、「ターゲット:タイミング:オファー:クリエイティブ」を「5:2:2:1」のバランスで考えるということを指します。具体的に各要素の説明をします。
■ターゲット(重要度5)
送付先リストがないとDMを発送することはできません。しかしながら一度来店・購入している顧客のリスト化はそれほど難しいことではありません。来店時や購入時における会員カードの作成、Webからの会員登録、商品やサービスに対するアンケート収集など、顧客の購入後行動の接点においてリストを収集することができます。
またセグメンテーションするための付加情報をとることも重要です。企業サイドが持つ購買情報は言うにおよばず、属性情報などもあるとよりターゲットを絞り込みやすくなります。個人向けの商品・サービスであれば個人の情報だけでいいかもしれませんが、ファミリー向け商品・サービスであれば家族構成が情報として収集できていればより精度の高いセグメンテーションをすることが可能になります。この付加情報は扱う商品やサービスで異なることは言うまでもありません。
■タイミング(重要度2)
DMを送るタイミングはターゲットに続いて重要です。タイミングはリピーターへの強い動機づけとなるからです。DMを出すタイミングは一般的には新商品・新サービスの発表や、季節性のある商品であれば季節の変わり目に発送することが多いと思います。各種行事(入学式や卒業式、誕生日など)や祭事も動機づけに影響を与える大事なタイミングと言えます。
タイミングを考える上では、受け手にとっての最適なタイミングはいつなのかということを考えることが重要です。先ほどの行事や祭事は最適なタイミングだと言えますし、例えば基礎化粧品やサプリメント等定期的に購入する商品であれば、前回購入からの経過日数から、そろそろ商品がなくなりそうなタイミングでDMを出すということで効果を上げることができます。
昨年の全日本DM大賞では、顧客がWebで閲覧しても予約までに至らなかった場合、閲覧していた商品をパーソナライズしたDMを翌日送付して予約につなげるという企画がありました。これは閲覧⇒検討⇒予約という閲覧者のタイミングをとらえ、いち早いDMのアプローチで予約につなげたと言えます(写真1)。
送り手が一方的な、言い換えるならば自分たちの売りたいタイミングという理由だけでDMを発送しても受け手はなかなか反応してくれません。
■オファー(重要度2)
オファーの提供はリピーターをつなぎとめるために必要な要素です。特にBtoC商材は、同じ機能であれば、新しい商品にスイッチした時のリスクが低いため、リピーターの離反を防ぐという意味でもオファーは必要です...