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Withコロナ時代の新しい店舗集客と接客

アプリを活用したOMO施策に効果 あえて「売らない」店舗も強化

林 直孝氏(パルコ)

緊急事態宣言解除を受けて全国の店舗で営業を再開したパルコ。アプリを中心としたテクノロジーを駆使してOMOを推進してきた同社は、休業中もアプリで継続的な顧客接点をつくり、来店・購買につなげた。

購買意欲は下がっていない

──5月中旬から地域ごとに順次営業を再開していきました。営業再開後の客足や売上の変化は。

5月14日から松本・静岡・仙台、20日から広島・福岡、22日から名古屋と、各店舗を時間短縮で営業再開しました。また、緊急事態宣言解除後の6月1日からは、首都圏の店舗や札幌の店舗を時間短縮で営業再開しています。

既存店の取扱高は、6月は全店計では前年実績に達しておらず、中でも東京都心や札幌、名古屋、福岡など都市部の店舗に関しては、宣言解除後も都市部への外出を控えた生活者の動向が影響しています。一方で、東京都内でも調布やひばりが丘、埼玉県の新所沢など郊外型の店舗は、前年比でプラスに転じています。

ただ、全国で共通して店内の滞留時間は短くなっています。目当てのものだけを買ってすぐに帰る方が増えているのです。その分、パルコオンラインストア(EC)の受注高は昨年同時期の約3倍になるなど、“非接触”のニーズが高まっていることが分かります。

こうした傾向から分かってきたのは、生活者の購買意欲が決して下がったわけではないということです。都心の店舗は、電車を乗り継いで出かける必要があり、人混みも懸念されるため来店しにくいものの、徒歩や自転車やマイカーで行ける生活圏内の店舗は利用しやすいと考える方が増えています。“最寄りの店舗で手早く買い物をしたい”という姿が見えてきたのです。

──売れ筋の商品・ジャンルなどに変化はありますか。

コロナ前と比べて、買い物内容に変化があることが数字からも分かってきています。好調なジャンルとしては、家具・インテリア・化粧品や楽器・手芸品など趣味に使うものが挙げられます。こうした商品は、生活必需品と比べて高単価であることが特徴です。郊外型の店舗を中心に、このような商材がよく売れています。

一方で、上り調子に戻れていないのは旅行・映画館・フィットネスジム・スクールや飲食などのサービス業などです。そもそも営業を再開できていない店舗も多く、店内での必要以上の滞留を避けたいという消費者心理も相まって、復調にはまだ時間がかかるでしょう。

複合的な認知・体験を生む

──新型コロナウイルスが長期戦となる中、店舗にはどのような役割が求められるとお考えですか。

緊急事態宣言中のパルコでも、ドラッグストアや食品フロアなど生活必需品を販売するテナントは営業していましたが、本来的にパルコのようなショッピングセンターに求められる価値の多くは「不要不急」なものだと考えています。

買いたいものを決めずに店内を“ぶらぶら”して、その時気になった商品を買う“非計画購買”をする客層が多いのが特徴です。マズローの「欲求5段階説」でいえば、上から3つの「自己実現欲求」「承認欲求」「社会的欲求」を満たすものだと思います。

また、ショッピングセンターでは、様々なブランドや商品、サービスを一度に体験できるため、複数ブランドの「認知・体験」による相乗効果を期待できます。例えば家族で買い物へ出かけて、子どもが欲しがっていたおもちゃを買い、リビングに置く新しいソファを買い、みんなでおいしい食事を食べて帰った、という体験が刻まれれば、そこで購入したおもちゃ、家具、レストランのそれぞれに対して複合的な「認知・体験」が生まれます。

購入する際も、商品のプロフェッショナルとして信頼できる店頭スタッフから「接客」というハイレベルな「おすすめシステム」を通じて購入できる安心感があり、納得して商品・サービスと出会えるSerendipity(すてきな出会い・発見)のある場所だと考えています。

つまり、複数のブランド体験による生活者との絆をより強固にするのがショッピングセンターの役割です。生活者との「接触頻度×体験の質」を高めていくのが、私たちの使命だと捉えています。

アプリ利用者の来店は4倍に

──その中で、Withコロナ時代においては、どのように生活者との絆を強めていきますか。

2014年ごろから...

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