食料品などを扱うスーパーを全国に189店舗展開するカスミ(茨城県つくば市)は、移動スーパーやオンラインデリバリーなど“非店舗”での売上が大きく伸びている。社長の山本慎一郎氏が、コロナ禍でのニーズの変化や未来の店舗構想を語る。
店舗都合での来店を減らす
──スーパーはコロナ禍で来店客が減少する一方、巣ごもり需要によって客単価は増加傾向になっていますね。緊急事態宣言解除後の変化はありますか。
カスミでは、5月の既存店の客数は前年比の9割ほどでした。一方で、客単価は18.3%増、売上高も9.7%増で、巣ごもりによる買いだめ傾向が続いています。緊急事態宣言解除後は、徐々に客足が戻ってきていますが、コロナ以前にまでは戻らないのではないかと予想しています。
ただ、店舗に集客しすぎると感染リスクが高まるので、むしろ集客しすぎないようにコントロールしています。例えば、コロナ前に実施していた「日曜朝割10%割引」「木曜10%割引」といった集客イベントは当面の間中止しています。代わりに、木曜と日曜にお買い物いただくと、次回から期間中ならいつでも使用できる「10%割引クーポン券」をレジで配布しています。
Withコロナやアフターコロナでは、我々の都合で来店してもらうのではなく、お客さまの好きなタイミングでサービスが受けられるように、集客方法も変化させていかなければならないと思っています。
個々人のスマホとつながる
──店舗の混雑緩和という点では、レジに並ばずに決済ができるScan&Goや、自宅で注文ができるオンラインデリバリーなど、スマホアプリを通した新サービスを続々と展開しています。
Scan&Goは「U.S.M.H公式モバイルアプリ」で利用できる独自のサービスです。スマホカメラによる商品登録とキャッシュレス決済機能を搭載していて、店舗で購入したい商品のバーコードを読み取ることで、レジに並ばずに買い物が完了できるのが特徴です。
米国のスーパーマーケットでは比較的浸透している決済方法ですが、カスミでも2019年秋以降、順次対応店舗を増やしています。3月にはScan&Goの機能を活用した完全無人店舗「オフィスマ(オフィススマートショップ)」をオープンし、現在15拠点で展開しています。
また、従来のネットスーパーの機能を拡充させたモバイルアプリ「U.S.M.Hオンラインデリバリー」もリリース、6月29日からフードスクエアカスミ柏千代田店(千葉県柏市)で導入を始めました。
これは、アプリから注文した商品を自宅や店頭などで受け取ることができるサービスです。こちらでも「U.S.M.H公式モバイルアプリ」のバーコード読み取り機能を活用していて、店舗に在庫がある場合に限りますが、自宅にある商品のバーコードを読み取ってそのまま注文することもできます。
──これらのサービスを立ち上げた経緯は。
「お客さまの新しい買い物体験の場をいかに増やしていくか」が導入の狙いです。オフィスにオフィスマが導入されたら、アプリをダウンロードして利用する機会が増える。そのアプリでカスミに来店したときは、Scan&Goを使った決済ができる。家に帰れば、オンラインデリバリーの注文ができるなど、場所を問わない買い物体験が可能になります。
最終的に...