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Withコロナ時代の新しい店舗集客と接客

店舗とECの両輪で進める オムニチャネル時代の新しい評価軸

逸見光次郎(CaTラボ)

コロナ禍を受けて、消費者の行動もオンライン化が進んだ。店舗集客においても、ECとの連携はより欠かせないものに。数々のオムニチャネル化を推進した筆者が、店舗とECの連携を解説する。

コロナ禍で多くの小売流通業が苦しい状況に立たされています。その中であらためてデジタルを活用した集客・販売の可能性が見直され、すでに取り組んでいる企業はもちろん、これを機にあらたに取り組み始める企業も出てきました。店舗や拠点を持つ企業がEコマースやSNSを通じた情報発信・販売に取り組むことを「オムニチャネル化する」とも言います。

そもそもオムニチャネルとは?

このオムニチャネルという言葉、なかなか聞きなれず本質が分かりにくくもあります。基本は「店舗・ネットにかかわらず、その企業が持つあらゆる接点で顧客が情報を取得し、買い物ができる環境をシームレス(途切れなく)に提供すること」です(図1)

【図1】企業のチャネルの進化

筆者作成

こう書くとクロスチャネルと何が違う?とよく聞かれます。実はチャネルだけがシームレスにつながれば良いのではなく、企業からの情報発信、顧客の登録・利用情報などの各種情報が双方向性をもって利用可能になっていることが大事なのです。

例えば店舗で買い物をしても、ネットで買い物をしても、共通会員としてポイントを利用でき、あとで購入履歴を見た時にも両方の履歴を見ることができることが必要です。またその情報に基づいて企業側からは最適なおすすめ情報をお届けできます。店舗だけ、ネットだけの購入情報からのおすすめ情報では偏ってしまい、結果的に顧客の離反を招いてしまいます。この情報・購買チャネルと、双方向の情報のつながりがあってこそオムニチャネルと呼べるのです。

ネットの進化と世の中の変化

私が三省堂書店に就職した1994年当時には、店舗に1台のパソコンがありました。しかし社員が個別にメールアドレスを持つことはなく、店舗アドレスでの本社とのやりとりや、インターネットではなくイントラネットを通じた商品検索、売上データのアップロードなどに使われていました。いわゆるストアコンピュータです。それからのインターネットと通信、PCの進化はもちろん、2008年に日本で発売されたiPhoneにはじまるスマートフォンの進化はあえて語るまでもないでしょう。この20年余りに劇的な進化を遂げてきました。

一方で小売市場は1997年をピークに鈍化したと言われています。その背景として人口の変化は影響が大きいと考えます。総人口は横ばいに見えますが、1990年ごろをピークに生産年齢人口が減り始めています。ここは生産だけではなく一番消費する層でもありますから、バブルや様々な経済要因ともあいまって消費が鈍化していることとつながっていると考えます。訪日客は増えていて4兆円の消費を生んでいると言われますが、今回のコロナ禍で激減し、それ以上の金額だったことが分かります。

この中でEC化率は順調に増加しています。しかし分母となる市場数値は停滞もしくは鈍化しており、分母が成長しない中でのEC化率の増加は、必ずしも喜べません。ですから単にEコマースやデジタル化に取り組めば集客、売上・利益が伸びるわけではないことがお分かりいただけると思います。

オムニチャネルの枠組み

最近よく語られるデジタルトランスフォーメーション(DX)も、「経営からのトップダウンで」「IT基盤を強化することで」と断片的に語られがちです。私は経済産業省のDX推進ガイドラインが最も分かりやすく本質を示していると思うのでいつも参照しています。これまでは経営やITの改革を唱えることが多かったのですがここでは明確に「経営・業務・ITの変革」と業務の変革が必須であるとされています(図2)

【図2】DX推進ガイドライン

出所/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」(H30.12)

オムニチャネルにおいても同様で、図3の通り企業としてお客さまに向き合う中で、経営とITの間に6つの部門があり、それぞれが経営戦略にのっとり、IT基盤を活用しながら、相互に関連/支援しつつ成長するフレームワークとなります。

【図3】オムニチャネルフレームワーク

出所/日本オムニチャネル協会

いずれにおいても業務改革が焦点になる中で...

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