新生活様式で変わる消費者と従業員の心理の変化。実店舗に求められる新しい役割とは何か。ニューリテール領域の企画プロデュースを行う著者が解説する。
政府の緊急事態宣言が解除されたものの、当面はまだ慎重な実店舗の運営が求められています。一方で、新型コロナウイルス以前の2018年ごろから、小売業における省人化や接客効率化が進み、タッチパネル式で注文する居酒屋、回転ずし、コンビニのセルフレジ、ロボット配膳などのリテールテクノロジーが徐々に普及。多くの小売店舗は、それらによって、人材不足・人件費高騰の課題を解決しようとしていました。
そこで、コロナ禍が起こりました。単なる省人化や接客効率化の観点だけでなく、感染予防のための非接触、接客時間短縮のための安心安全の観点からの「優しいテクノロジー/ソリューション」を導入する企業が増えています。
コロナ禍でデジタルシフト真っ盛りの中、当社の経験則やプロデュース視点から、「新生活様式で変わる実店舗の4つのポイント」「新生活様式で変わる実店舗の活かし方」を考察してみました(図1・図2)。
変わる実店舗の4つのポイント
A 3密回避/ソーシャルディスタンスの実装
こちらはもはや、説明するまでもなく、メディアなどで毎日のように報じられ、各業界のガイドラインに従い多くの方がすでに実践されているので、ここでは多くの説明を割愛します。毎日の朝礼や研修でも、最新の感染症対策をアップデートし、日々更新して実践していくことが求められています。
B 対面接客時間短縮/非接触コミュニケーションの促進
お客さまと従業員の両者の安心安全のために、対面接客時間短縮/非接触コミュニケーションの促進が不可欠となってきています。店舗のスタッフにとっても、毎日の業務のことであり、会社の理念が現れる部分です。常に最善策をアップデートすることが大切。今までは、対面接客でビールを注いでいたお店が非接触のセルフ自動サーバーに変わったり、混雑状況を確認できるAIカメラソリューションを導入して店舗業務の簡略化をしたりなど、テクノロジーで、「安心安全」の「守り」を強化する姿勢が求められてきます。
C プレミアムな体験/稀有な情報交換の場
実店舗やリアルプロモーションの自粛ムードが高まる時こそ、ECでもオンライン施策でも味わえない、自分にとって必要性が高い「プレミアムな体験/稀有な情報交換の場」が効果的です。そのブランドやプロダクトの本質や姿勢をユーザーに伝える意味でも、基本的にはおすすめです。ECやアクセスログでは分からない、顧客の動向、顧客情報獲得の場にもなります。その新価値創出が新生活様式の中で「攻め」のマーケティング施策として、重要な時代となってきています。
D コミュニティ・リレーションズ
熱量がある深いコミュニティをつくり、共感体験を経て、上質で持続性の高い購入動機を設計します。また、ファンとの距離感を施策の展開内容でコントロールして、実店舗への愛着と感動機会を増幅。それがハマる場合、彼らはまた新しい顧客を積極的に連れてきてくれます。
以降は、これら「実店舗の4つのポイント」について、A以外の事例とともに、紹介していきます。
Bの事例
対面接客重視の実店舗に新感覚テクノロノジー
いま店舗には、新テクノロジーがいくつも登場しています。店舗にAIカメラを設置し、データを自動で収集し、来店者の混雑や行動を把握して、現場にいない管理者が状況や傾向を把握できる「AIカメラソリューション」はそのひとつです。新型コロナウイルスの感染下においては、実店舗を生活者や従業員に安心して利用してもらうために、感染対策の「密集」「発熱」「マスク」を可視化することができるサービスです。
また、接客時間の短縮、省人化など業務効率化も推進する必要があります。それに応えるテクノロジーが、一人ひとりのユーザーの特性や要望に自動で合わせることができる「パーソナライズド動画ソリューション」です。
入力フォームにて、ユーザーが選択した内容に応じて、そのユーザーに合わせた内容の動画で回答されます。ウェブと連動して「動画で分かりやすく、ユーザーごとの提案を詳細に説明」することで、予約/購買へと効果的に誘導が可能。例えば、今まで1時間かかっていた接客時間を20〜30分に短縮することも可能になってきています。
来店前にウェブでその動画を見せることができれば、コロナ禍でわざわざ店舗にいく必要がなかった人に、ECでの購買を促せ、店舗の混雑を少しでも回避することができ一石二鳥となります。また...