緊急事態宣言の解除によって、店舗への集客が各所で開始された。今の時代、店頭におけるツールはどのような役割を担うのか。店頭販促のコンサルティングを行っている著者が解説する。
長年、店頭集客に携わってきましたが、今、店頭集客はかつてない転換期を迎えていると言えます。今までは、商品力・価格力・サービス力といった要素を、いかに分かりやすく魅力的に伝えるか?が、店頭集客を成功させる上での定石でした。
看板・店頭ボード・のぼり・タペストリーといった各種店頭販促ツールを駆使し、「こんなに優れた商品です」と商品力をアピールしたり、「こんなに低価格です」と価格力をアピールしたり、「こんな接客を心掛けています」とサービス力のアピールをしたりすることで、お客さまに来店意欲・購買意欲を持たせることができていました。
しかし、Withコロナの今、店頭集客において、予想もしていなかった新たなキーワードが加わりました。それは、「安心力」です。誰しも新型コロナウイルスに感染したくありません。そのため、日々の感染リスクを極力避けていると思います。そうしたリスク回避の行動は、お店選びにも大きく影響を及ぼすようになりました。
つまり、Withコロナのお店選びは、従来の商品力や価格力といった要素に加え、「コロナに感染するリスクが低い」「ウイルス対策をしっかりと行っている」といった、「安心できるお店かどうか?」という観点が加わったのです。例え、どれだけ素晴らしい商品を有していても、この安心力が著しく欠けていると判断されると、「感染リスクが高いから、来店はやめよう⋯⋯」と、お客さまを取りこぼす可能性もあります。
ビフォーコロナは商品力・価格力・サービス力などをアピールすれば十分でした。しかし、それでは足りなくなってしまったのがWithコロナです。だからこそ、店頭集客のあり方・やり方を、見直していく必要があるのです。
“手書き”のツールが重宝
さて、店頭集客を実現させるための販促ツールはいくつかありますが、コロナ禍においては、特に手書き店頭ボード・手書きPOPをおすすめします。
その理由として、新型コロナについては不確定要素が非常に多いことが挙げられます。もし急に収束するようであれば、以前の店頭販促に戻し、感染者増加が続くようであれば、対コロナの内容を増やす⋯⋯常に臨機応変な修正対応が必要なのです。
その点、ボードであれば文字を消して、サッと書き直すことができますし、POPについても新たに作成して付け替えれば完了です。外部に依頼したり、印刷したり⋯⋯といったコストやタイムロスは不要。明日、どうなるのか分からないからこそ、社内・店内で修正が容易で、小回りがきく手書き店頭ボード・POPが重宝するのです。
また、もうひとつの理由として、擬似的コミュニケーションの創出があります。感染防止には、人と人の接触を極力減らすべきと言われていますので、店頭での呼び込み・声かけは、控えざるを得ません。そうなると、必然的にリアル店舗ならではの活気やコミュニケーションは失われます。
その部分を補うのが、手書きの持つ温かみです。積極的な接客ができない代わりに、気持ちを込めて書いたボード・POPを店頭に用いることで、スタッフの匂いや想いを伝えることができます。擬似的ではありますが、手書きボード・POPを通じて、お客さまとスタッフとのコミュニケーションが発生し、リアル店舗ならではの買い物体験を提供できるのです。
作業量的に、すべてを手書きで制作することは難しい場合もあると思います。しかし、部分的にデジタル制作も活用しつつ、可能な範囲で手書きボード・POPに取り組んでほしいと考えます。本稿でも主に手書きボード・POPの活用方法について解説します。
感染予防対策も発信
では、具体的にどのような店頭ボード・POPを出せばよいのか?冒頭で述べた通り、Withコロナの店頭集客は、安心力のアピールが新たな要素となります。そこで、「コロナウイルス予防のため、どのような取り組みをしているか?」を発信するボード・POPは必須といえます。
これについては、シンプルに、どのような策を講じているのかを発信しましょう。新型コロナは時として生死にも関わる問題ですので、変に茶化して書くことはせず、真摯に伝えるべきです。また、個人名を出すことに抵抗がなければ、店長・責任者の署名を入れるのも◎。責任者が見えることで、より安心感が増します。
とはいえ、ウイルス予防への取り組みのアピールだけでは、なかなか、集客はかないません。「こんなに優れた商品ですよ」「こんなに低価格です」といった、従来通りの要素を訴える販促物も、引き続き、必須です。
つまり、Withコロナの店頭集客とは、「コロナウイルス予防への取り組みを訴える販促物」と従来通りの「商品力・価格力・サービス力などをアピールする販促物」の2つの要素をセットで出すこと。これがスタンダードになるのです。
2つの要素の販促物の比率についてですが、Withコロナとはいえ、最終的な来店・購入の決定打になるのは、やはり、商品力・価格力・サービス力といった要素ですので、そちらの比率を多く、目立つように店頭販促物を計算・設置するべきです。
ただし...