ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。
来場者の半数が購入するほどの人気
リットーミュージックは、『ギター・マガジン』『サウンド&レコーディング・マガジン』などの雑誌を発行する音楽専門の出版社だ。同社が2016年に本格的に始めた、古いツアーパンフレットの電子書籍がヒットしている。関連商材も含め2019年には全社売上高の1割を占めるまでに至っており、現在もまだ伸びているという。
この事業を始めたきっかけについて、リットーミュージックの松本大輔社長は、「たまたま、数十年前の古いコンサートパンフレットが、古書店で1万円、2万円という高値で売られているのを知ったことでした」と話す。
「昔のパンフレットの価値が高まっているのはいいと思うのですが、古書マーケットでは、いくら売れても権利を持っているアーティストや所属事務所には印税などが入りません。どうにかできないかと考えました」
そこで、アーティストや事務所にも利益を還元できる方法を考えた。それが、ツアーパンフレットの電子版による復刻ビジネスだ。
最初に手がけたのは、ロックバンドLUNA SEAのコンサートツアー。デビュー当時からのツアーパンフレット全23冊を電子化し、大手電子書籍サイトにおいて販売した。
同サイトの会員になり、ダウンロードすることで電子パンフレットが手に入る。2014年5月の「LUNA SEA」のコンサート会場の物販コーナーでは、タッチ&トライ・コーナーを設けて電子パンフレットの見本を展示したり、チラシを配布。電子書籍サイトでの購入を促した。
しかし、売れ行きは想定をはるかに下回った。
購入者からの反応は悪くない。高解像度で制作しており、誌面(画面)を拡大してもほとんど画質が劣化せずに見られるためだ。メンバーが当時身に付けていたアクセサリーや、使用楽器、機材などもちゃんとわかると喜ばれていた。
「LUNA SEA」といえば日本を代表するロックバンドで、ファンの熱も高い。にもかかわらず、なぜ売れないのか──。
悩んだ松本氏は、偶然立ち寄ったコンビニでAmazonやAppleのプリペイドカードが売られているのを見て、カード販売方式を思い付いた …