じわりじわりと開幕が近づいている東京2020パラリンピック。メダル獲得が期待される競技は多いが、なかでも注目が高まっているのが、前回リオデジャネイロ大会で銀メダルを獲得したボッチャだ。目標は東京大会での会場「有明体操競技場」1万2000席を埋め尽くすこと。競技人口と認知の拡大を目指す日本ボッチャ協会の取り組みを紹介する。
愛称は「火ノ玉ジャパン」東京2020でのメダルも期待
ボッチャは、重度の脳性麻痺や、四肢に重い機能障がいを持つ人のためにヨーロッパで誕生したスポーツだ。パラリンピックの競技種目としては、1988年のソウル大会から公式採用されている。
「ジャック」と呼ばれる白いボールをめがけて、赤と青それぞれ6つのボールを投げたり、転がしたりして、ジャックにどれだけ近づけるかを競う。その際、相手のボールにぶつけて反動を利用したり、あるいは相手のボールを遠ざけたりすることも可能だ。自力でボールを投げることができなくても、競技アシスタントに意思を伝え、ランプと呼ばれる器具を使ってのプレーもできる。
パラリンピックなどの国際大会では、車いすの操作可否やアシスタントの有無など、障がいの程度に応じ、「BC1」~「BC4」とクラスを分けて実施されている。ただ、ボッチャ自体は障がい者だけのものではなく、より軽度の障がいでも、健常者もプレーできるスポーツだ。国内では独自に「オープン座位」「オープン立位」といったクラスを設定し、より広く競技者を集めている。
日本ボッチャ協会はリオデジャネイロ大会直前の2016年8月、代表チームの愛称を「火ノ玉ジャパン」と命名。個人、チーム合わせて5名の選手を派遣した。結果、チーム戦では銀メダルを獲得。地元開催となる東京大会では、より良い色のメダル獲得を目指す。
競技力向上には、認知の促進と競技人口の増加は欠かせない。そこで日本ボッチャ協会では「強化」「普及」「PR」を一体化した施策を進めている。19年10月時点での同協会の会員数は1000人弱。会員は、協会やプレーをサポートする人や審判員、普及に関わる人も含まれるが、17年度には365人だったことを考えれば、ボッチャの輪は大きく広がっている。
競技人口もリオ大会から19年度までで倍近くとなった。協会の事務局長を務める三浦裕子氏は「リオ大会の前に選手登録して試合に出場している人は100人ほどでした。12月に開催する日本ボッチャ選手権は、東西で予選会を開催していますが、ことしのエントリーは東西それぞれ100人近く、単純計算でも倍。小・中学生の競技者も増えていて、競技人口は右肩上がりです」と話す。
強化・普及・PRに全国キャラバンをフル活用
リオ大会の開催前、ボッチャの認知度は東京都民でも8%ほどだったという。同大会では国際映像もなく、チーム戦の決勝に進出して急きょカメラが入るような状態。メダルを獲得したニュースでようやく20%近くに上昇した。
こうした状況の中、東京大会へ向けて打ち立てた目標が、会員登録数1万人。ボッチャの試合会場「有明体操競技場」1万2000席を満員にすることを目指す。
「強化の部分では勝ち続けることが不可欠です。リオ以降、国際大会でもメダルを獲得し、そこはクリアできている。あとは普及とPRをどうするか。やはり知ってもらわないと競技人口も増えませんし、協会には人員も限られているので、強化・普及・PRを一体化した形で進めています」(三浦氏)
そのための施策が全国で展開するキャラバンだ。3日間のプログラムを基本とし、2日間を学校と特別支援学校への訪問に、残り1日を広く一般を対象とした体験会の開催にあてている …