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店舗のメディア化で変わる売り方

店舗のメディアと小売の役割

郡司 昇氏(店舗のICT活用研究所)

デジタルサイネージやビーコンを活用したアプリなど、小売店でもさまざまなテクノロジーを活用したメディアを見るようになった。これらのメディアの登場によって、これから店舗はどのように変わるのか。店舗のICT活用研究所の郡司昇代表が解説する。

店舗の情報メディアは紙から動画へ

「メディア」と聞くと、マスメディアを想起する人が多いかもしれない。しかしそれは、ごく一部の側面に過ぎない。

ここで『図書館情報学用語辞典(第4版)』を引くと、メディアの項では、①情報メディア ②記録媒体 ③マスコミの3つが挙げられている。情報メディアとは、人間の情報伝達・コミュニケーションを媒介するものだそうだ。

続けて、「情報伝達に関与するものはきわめて多様なため、さまざまに概念規定が可能である。媒介する物体・装置もしくは技術的特性に焦点を合わせる場合や,単に技術ではなく社会的なシステムであることを強調する場合がある。」と書かれている。

この定義に照らせば、先に挙げた②や③も該当するのではないか。そして、本稿の主旨である店舗や店内に設置されたさまざまな媒体も、「メディア」と呼べるだろう。

さて、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンはコミュニケーションに影響をもたらす度合いとして「3Vの法則」を提唱している。これによると、言語(Verbal)情報が7%、聴覚(Vocal)情報38%、視覚(Visual)情報55%の割合で影響するのだそうだ。

現在、小売店舗内で最も多いメディアは紙製のPOPだが、これで伝えられるのは限られたスペースに記載できる言語情報のみである。「3Vの法則」に従って動画にすることを考えてみよう。画面を切り替えて多くの言語情報を表示し、より影響力の高い視覚や聴覚情報と組み合わせれば、一層効果の高いコミュニケーションが可能になるということだ。

実際、米国の食品スーパー大手クローガーは、一部店舗に、スマート商品棚「EDGE」を導入している。のべ1700平方フィートにわたる棚札部分に1396×12万5000ピクセルのディスプレーを搭載した商品棚だ。価格を随時変更したり、クーポンを表示したりするほか、スマートフォンアプリと連動して、顧客の買い物リストに合わせて表示を変えることもできるという。

「EDGE」は、Enhanced Display for Grocery Environment(日用雑貨店のための拡張型ディスプレー)の略。多機能な分、導入コストがかさむからか、導入はまだ一部にとどまっているようだ。

かねて話題になった上海虹橋空港の無人コンビニ「云拿无人便利店(Lepick)」には、動画表示に機能を限定した低コストなディスプレーがあった。こうしたタイプであれば普及の可能性は十分にありえる。

国内でも広がるデジタルサイネージの活用

国内では、店内で動画を流す方法として最も一般的なのは、POPよりも大きな5インチ~数十インチのデジタルサイネージである。

ことし4月に「スマートストア」としてリニューアルオープンした「メガセンター トライアル新宮店」(福岡・糟屋)は、2階建て3400坪の大きな売り場に10万SKUの品揃えという24時間営業の大型店。この店舗では、店頭からプロモーションコーナー、エンド陳列、産直野菜、冷凍食品中置上部…とありとあらゆるところにあるデジタルサイネージが設置されており、さまざまな情報を得ることができる。(写真❶、❷

写真❶ ※本稿の写真はすべて著者撮影

写真❷

同店では、バーベキュー特集や梅雨特集といった季節に合わせたテーマを設け、各サイネージで商品を訴求している。これは2階への誘導も兼ねているのがポイント。バーベキュー特集であれば、1階の食材やアルコール飲料の訴求はもちろん、2階のアウトドア用品を意識してもらうことも可能となる。梅雨特集では、まな板を除菌する商品の動画を食品売り場で流していた。衝動買いを促すきっかけとなりそうだ。

トライアルでは、メーカーが制作したCMをそのまま流すのではないことも特徴のひとつ。社内で自社店舗に合った形に加工しつつ、メーカーから広告費を得て、運用コストの一部を賄っている。(写真❸

写真❸

調剤薬局最大手であるアインファーマシーズが運営するドラッグストアの「アインズ&トルペ」では、2015年に資生堂から買収した化粧品ブランドであるアユーラをはじめとしたプライベートブランドや各種メーカー化粧品の紹介動画を店内のデジタルサイネージで放映している。前者はブランドの認知度や好意度の向上が目的で、後者は販売促進と同時に運用コストを賄うことが目的であるだろう …

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