次世代型の商業施設として、「ファッション」「アート&カルチャー」「エンタテインメント」「フード」「テクノロジー」の5つを軸にする「渋谷PARCO」。さまざまな新しい取り組みに挑戦する同施設はどのような買い物体験を提供していくのか。

「渋谷PARCO」の外観。建物外周には、スペイン坂から続く「立体街路」を設けた。街路には、フロア毎に店舗への入り口があるため、渋谷の街を歩くようにショッピングを楽しめる。
リアルとデジタルを組み合わせできないことをなくす
「渋谷PARCO」が3年ぶりに帰ってきた。2019年11月22日のリニューアルオープンを経て、実店舗における新たな買い物体験を提供する場となった。
それを象徴するのが、5階にある「PARCO CUBE(パルコキューブ)」だ。出店するのは初の直営店となる「@Ray-Cassin.onlinestore.tokyo」、「RADIO EVA STORE」といった、先進的かつ個性的なブランド。およそ130坪(約430平方メートル)ほどのスペースに、11店舗が売り場を設ける。
かつてDCブランドブームの発信拠点を担った「渋谷PARCO」だが、いま再び、ブランドを育てる役割を担おうとしている。
根底にある思想はそのままに、売り方のほうは進化した。
各店舗は、従来の売り場面積の約半分ほど(10坪前後)に、限定商品などを並べる。しかし、買えるのはそれだけではない。店頭のデジタルサイネージから各店の自社ECと連携した「PARCO ONLINE STORE」から、EC在庫のある商品を注文できるのだ。
デジタルサイネージで取扱商品を閲覧し、欲しいものを見つけて選択。二次元コードを自身のスマートフォンで読み取ると、「カートに入れる」と表示される。それをタッチすると、商品情報が転送され、スマホ上のカートへ。そのまま決済が可能。
また、転送した商品情報は1週間ならカートに商品データを残しておくこともできる。店頭で焦って購入を決めなくても、あとから「やっぱり欲しい」と思ったタイミングで在庫があれば、購入できるようにした。ひるがえせば、「やっぱりいらない」ということも起きるということ。
「大前提として、お客さまにとってよりよい買い物体験を提供することが重要です」と話すのは、パルコ グループデジタル推進室デジタル推進担当の野中健次部長だ。
「あとで考えてみて、不要だと思われることもあるかもしれませんが、お客さまのタイミングでご購入の判断をしてもらう方が、満足度としては高いのではないでしょうか。これからのリテールは、オンラインとオフラインのそれぞれのよい点を生かすことを意識し、互いのできない部分をカバーしていくことで、お客さまそれぞれに快適な購買環境を提供することが大切だと思います」(野中部長)
スタッフが持つタブレット端末でも同様の買い方ができる。もちろん、店頭にある商品はその場で購入可能。
他方、「テナントさまからさまざまなご評価をいただいています」と話すのは、渋谷PARCOの菅原崇 店次長(営業担当) …