英国と日本には共通点がある。島国で、人口密度が高い。かたや武士道、かたや騎士道。象徴君主を置き、お茶が好き。全く異なる点もあるが、英国のいまは、ヒントになるだろう。現地からのレポートをお送りする。
2013年、当時ロンドン市長だったボリス・ジョンソン氏は、市内の政策研究センターでスピーチした。主題は、経済競争が激化し、格差が広がる現代の英国社会において、サッチャー前首相の考え方を議論して解決法を探るというものだ。
その中で彼は、今日の社会における人々を"箱入りのコーンフレーク"に例えた。箱が激しく揺れるほど──つまり競争が激しいほど、知能指数の高い優秀な人々は箱の天辺に到達し、経済的に成功できる。ジョンソン氏は、「経済格差の大きい不平等な社会は競争を促し、より優秀な人が浮かびあがるチャンスを生むという良い面も持ち合わせるものだ」と語る。
これは裏を返せば知能指数が低く、競争にあぶれた者は浮かび上がれないことを示唆する。同氏のスピーチは大きな議論を呼んだ。しかし、彼が当時から大衆に人気があり、いまや英国の首相を務めていることを鑑みると、この国にはジョンソン氏の意見に賛同する人は少なからず存在するのだろう。
ジョンソン氏はまた、同じスピーチで、"コーンフレークの箱"の上層にいる人々が多くの収入を得て高額の税金を支払い、英国を支えていることも語った。ロンドンにおける上位10%の富裕層は、市の富の半分を所有し、彼らの収入は下位50%の人々が稼ぐ額の合計よりも多いという。対して、箱の底辺に属する人々は、ユニバーサルクレジットと呼ばれる福祉手当の受給者である。
低所得者の姿はたびたびメディアに取り上げられてきた。中でも2000年を過ぎてからテレビドラマの登場人物などとしても取り上げられるようになったのがChav(s)〈チャヴ(ス)〉と呼ばれる若者たちである …