有楽製菓は9月6日、チョコレート菓子「ブラックサンダー」の発売25周年キャンペーンを開始した。起用したのは、モデルで音楽家のMatt。独特なメイクと写真加工で話題のタレントだ。強いインパクトの広告表現で、注目を集めている。企画・制作を担当したのはkiCk。
常にパートナーとして話し合い
有楽製菓の河合辰信社長が"Matt化"した。2019年のハロウィンに合わせて公開した動画「有楽製菓社長が!?劇的!Mattメイクで大変身」篇だ。"Matt化"は、モデルで音楽家のMattさんによるメイクと写真加工。マネキンのような見た目が特徴で、のべ約70万回再生された。
「ブラックサンダー」発売25周年キャンペーンの一環で制作したもの。キャンペーン開始日の"黒の日"、9月6日に公開した「狂気!タピオカ大行列」篇と、「愛憎!テニサー大混乱」篇でもMattさんが出演している。前者は「Yahoo!トピックス」に掲載され、再生数はのべで約100万回を数える。
これら25周年キャンペーンの企画・制作を担当したのはkiCkだ。有楽製菓のほかにサンスターや旭化成ホームズなどの顧客企業を抱える。ブランディング戦略や広告、販促キャンペーンなどを手がけ、テレビCMやオンライン動画、デザインなどのプロダクション機能も社内に有している。社員数は60人。
有楽製菓マーケティング部の加藤武史課長は今回の25周年のコミュニケーションについて、「ターゲットは20歳~25歳の若い人たち。これは現在の主な購入者が比較的年齢が上であるためです。若い層に向け、『ブラックサンダー』の本質的なところ、ユニークさとか面白さや話題性だけではないことを訴える必要を感じていました。しかし、マジメすぎるのもブラックサンダーらしくありません。バランスを検討した結果が、今回の表現です」と話す。
加えて、加藤氏の念頭にあったのは、昨今のコンテンツ環境だ。
「Web上には、プロであればむしろブレーキをかけるところで、アクセルを踏み込むような、アマチュアのコンテンツが氾濫しています。広告表現で消費者をドキドキ、ワクワクさせるのはどんどん難しくなってきているということです」(加藤氏)
こうしたリクエストに対し、「これまで『ブラックサンダー』は、広告出稿に頼らないコミュニケーションをされていただけに、われわれスタッフの中でも、どれだけ多くのネタを盛り込めるか、挑戦となりました」と話すのは、kiCkのクリエイティブプロデューサー、中川咲子氏だ。
「Mattさんや河合社長の起用もそのひとつ。ターゲットやメディアががさまざまな側面から"ツッコめる"ようなポイントを多く盛り込み、広告にたよらず、どうメディアやSNSの話題をさらうことができるかPRの面を重視しました」
加えて、各動画で意識したのは、眉毛に「ブラックサンダー」を重ねるポーズだ。さらにTwitterへの写真投稿を募るキャンペーンを実施。これらには、購入者がマネしてみてほしい、という狙いがある。
さらに加藤氏は、「言葉ひとつの選び方、シーンの描き方にしても、『ブラックサンダー』が好きな方が表現している広告という点が大きかったと思います。メーカーのマーケターとして重視しているのは、最終的にお客さまのために何ができるのか、です。もちろん、広告代理店や制作会社のスタッフ、皆が同じ方向を向くことが欠かせません」と話す。
「kiCkとは今回が初の取り組みでしたが、単なる提案を受けるというよりも、常にパートナーとして話し合いを重ねてくれました。その上で、当社だけでは不可能な、表現面で助けていただいたという感覚でした」
kiCkは、「コミュニケーションの課題解決」を掲げ、多様な業種の大手企業から直接、オファーを受けて、課題解決のためのソリューションを提供しているクリエイティブエージェンシー。
大手代理店出身者をはじめ、メンバーは60人を超える。また、フリーランスでありながら社内に席を持つメンバーもおり、一部ギルド型組織の側面も持ち合わせている。
一般的な代理店機能に加え、プロダクション(制作)機能をも社内に持つのが特徴。デザインのみならず、CM・キャスティングを含む各種動画の撮影、編集もインハウスで行うため、ブランド戦略から広告・販促キャンペーンまで、トータルアウトプットが可能となっている。
kiCk inc.
http://www.kick.co.jp