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「また行きたくなる」店舗施策とアイデア

小売ミックス戦略で考える 競争力ある店舗づくり

金 昌柱氏(立命館大学)

顧客と直接の接点を持つ小売企業ならではの視点から設計された、マーケティング活動ともいえる小売ミックス戦略。競合店にはない独自の魅力をつくりだすための小売ミックス戦略の設計について、事例を基に立命館大学の金昌柱氏が解説する。

6つの要素で構成される小売ミックス戦略

小売ミックス(retail mix)とは小売企業が、日常生活において顧客が抱えているニーズを満たす目的で、顧客の購買意思決定に影響を与える店舗の営業活動に関わる要素の組み合わせと言えよう。この意味で小売ミックスとは、店舗の営業活動の総体であり、小売企業ならではの顧客接点から見たマーケティング活動と考えられる。

代表的な要素としては①「商品」、②「価格」、③「立地」、④「店内プロモーション」、⑤「顧客サービス」、⑥「店舗雰囲気」の6つが挙げられる。

それでは、ここで挙げた6つの要素について、ひとつずつ見ていこう。

①「商品」とは、顧客のニーズに対するソリューションであるということができる。顧客の購買代理業務を担う小売企業として、顧客がほしがるものを提供するため、品揃えの豊かさと魅力度を同時に高めていく活動は最も重要な要素と言えるだろう。

②「価格」は、小売企業が提供するソリューションに対して顧客が支払うコストである。価格戦略にはディスカウント・ストアなどの薄利多売型と百貨店などの厚利少売型の2つの方式があり、これらの組み合わせの程度により、多様な価格戦略が存在している。

③「立地」においては、顧客にとっての買い物場所の利便性が重要になる。ご存知の方もおられるかもしれないが、乗降客数1日約86万人のJR大阪駅中央改札口すぐのスーパーマーケット「いかりJR大阪店」の盛況ぶりからもわかるように、立地の利便性は直接の集客に結びつく重要な要素である。ただし、魅力的な場所は多くの小売企業が出店を希望するため、その分、店舗のテナント料や賃料が高くなる。

④「店内プロモーション」とは、店舗の営業活動に関わる顧客とのコミュニケーションのことである。特別割引、試飲・試食、ポイント付与などの施策によって、集客と同時に、短期的な購買も高める目的で実施される。また短期的な購買以外の効果が見込める施策もある。

たとえば、スーパーマーケットのオーケーでは、なぜその商品が高騰しているかを説明するなど、正確かつ正直な商品の情報を伝える「オネスト(正直)カード」がある。このように、販売活動において顧客に正しい情報を伝えようとする情報発信の活動は企業や店舗イメージを向上させる役割も持つ。

⑤「顧客サービス」とは、買い物に伴う顧客の問題や悩みを解消させて購買意欲を喚起する店舗側のサポート全般をいう。買い物時の従業員の接客をはじめ、試着室の使いやすさ、営業時間、インターネットや電話による注文受付の有無、クレジット決済対応、施設内のATM設置など購買前に必要となるサービス、買上げ商品の発送や配達、ギフト包装、交換、返品などの購買後のサービスまで含まれる。さらには施設内の駐車場、化粧室、レストランなどの補助的なサービスの質も、ここに含まれる要素といえる。

⑥「店舗雰囲気」は、買い物や購買意欲に関わる顧客の感情形成に影響を及ぼす店舗のデザインのことである。店舗のデザインは店舗の清潔感、レイアウト、ディスプレイ、香り、音楽、色、気温などから構成され、これらを上手に組み合わせて標的市場にふさわしい店舗のデザインを演出することが課題となる …

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