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THROUGH BOUNDARIES

「倫理」とデータビジネス

朱 喜哲(哲学者/プランナー)

二股に分かれたレールの先には──

(写真=123RF)

このところ、データビジネスにおいて「倫理的(Ethical)」という言葉を耳にすることが増えてきた。「いまや倫理的であることは市場競争力である」──今年9月にヘルシンキで開催されたカンファレンス「MyData2019」では、こうしたフレーズさえ聴かれた。MyDataはGDPRに代表される欧州のデータ行政の推進力のひとつである。

哲学・倫理学に携わる者として、こうした注目はありがたい。反面、「倫理」という語彙が便利な方便になってはいないかという懸念も抱く。実際、この語は「倫理的問題がある」といった批判的な文脈で使用されがちである。しかし、それを受けて具体的にどう対応すればよいのか、自明でないケースも多いだろう。そのため、一部のビジネスパーソンや技術者にとって「倫理的」とは曖昧で、具体性を欠くもののように思われているのだろう。

当然のことだ(と言いたいのだ)が、倫理学は融通無碍だったり曖昧だったりするような学問ではない …

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