J2リーグに所属するファジアーノ岡山。サッカーファンの間ではスタジアムグルメ「ファジフーズ」が充実していることで知られている。来場の理由としてサッカーではなく「グルメ」でもかまわないという姿勢は、ホームチームのサポーターだけではなく、遠征してくる対戦相手のサポーターにも支持されている。
目指せ年間平均1万人 CRMを推進
2009年からJ2リーグに参入しているファジアーノ岡山。ホームスタジアムは岡山県総合グラウンド内にある陸上競技場「シティライトスタジアム」(Cスタ)だ。最大収容人数は1万5479人。
15年には年間来場平均1万人の維持を目指し、「CHALLENGE1」を掲げた。翌16年は1万17人を集め、目標を達成。この年にはJ2リーグで6位となり、クラブ史上初めてJ1昇格プレーオフへの進出も果たした。
しかし、17年、18年はともに1万人に届かず。特に昨年は7月の西日本豪雨や台風など、気候環境にも影響を受け8599人と動員が減少してしまった。
今シーズンも第10節終了時で7837人。同時期に8000人を下回るのは14年以来だ。その後は挽回したものの、9月29日時点で9142人と、1万人超えは厳しい見通しだ。
こうした状況を打開するための一手が、昨年9月に立ち上げた、CRM推進部。同部の森繁豊部長は、「これまではシーズンパスを所有する人の情報は持っていましたが、試合ごとにチケットを買う人のデータはほとんどなかった。まずはデータを蓄積し、来場者の理解を深めることを目指しています」と話す。
まずはJリーグの公式チケット販売サイト「Jリーグチケット」からの購入と「JリーグID」の取得を推進している。
クラブ公式ショップ「ファジスクエア」でも、ID登録すればメールマガジンで最新情報が届くことなどを知らせ、ID登録を促している。このとき、チケット購入は不要。また、スポンサー企業の支援を受けて小学生を無料招待する「夢パス」も、IDを取得し、オンラインで申し込んだ人には特典がある。こうした施策で、ID登録者の伸長を目指す。
シーズンチケット所有者向けに、試合当日のイベント情報を伝えていたメールマガジンは、従来のテキストタイプからHTMLへ変更。
「一度来場すると『また来よう』とは思うものの、記憶が薄れていくのは自然なことです。こちらから、『そろそろどうですか』と働きかけて来場意向を喚起することを目指しています」(森繁氏)
チケット購入タイミングは試合直前か前日、前々日であることがわかっている。一方、他クラブの状況や、アンケート調査から、観戦の意思は、試合の1カ月前~2週間前に決定タイミングがあると判明。その前に情報を届けないと間に合わない。チケットは、前月の第1土曜日に翌1カ月分の販売が開始される。そこで、今シーズンからは、チケット発売のタイミングで開催日程と、イベント情報などをメルマガで配信するようになった。
今季10節の終了時で平均観客数は前年に満たなかったことは前述した。しかし、前売り券の販売数だけでみれば、前年と同等の規模で推移している。
「ひいき目で見れば、前売りで行動する人が増え、シーズンパス所有者など、コアなファン以外の人が来るようになったと見ることもできる。現在の配信サイクルに手応えも感じはじめており、やり続けることが大事」(森繁氏)
ID登録者数は18年シーズン終了時点で約1万3000人、9月初旬には2万4000人を超え、いまのペースを維持できれば目標の3万人に王手がかかる。IDが集まれば、より細かい来場者の属性分析によって、メルマガ配信のほか、より精度の高い施策を実現できる。CRM推進部設置の成果は現れはじめている …