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店舗課題を解決するリテールカンファレンス

10年後の日本の小売業を現代の東北で実践

西郷孝一氏(薬王堂)

流通革命の起きた1960年代以降、特に平成期は、商品の買い方やモノとの付き合い方が大きく変わった30年間でした。消費者、来店客にとっての「実店舗の価値」も移り変わっています。店舗の存在を考え直すことが、これからの発展には不可欠です。

東北6県で店舗を展開するドラッグストアチェーンの薬王堂が好調だ。2020年2月期末で売上高1017億円を見込む。店舗数は同期末で298店舗。既存店は昨年比105%前後を達成している。

薬王堂の外観。比較的駐車場を広くとり、入りやすさと出やすさに心を砕く。

10年後、20年後を見据えたローコストオペレーション

「お話しして、驚かれるようなことは一切やっていない」と話すのは、薬王堂の西郷孝一氏(経営戦略本部長兼店舗開発部長)だ。

「小売業でもドラッグストアは好調の業種。その追い風を受けていることはあるが、"田舎"と言われる東北市場でもまだ伸ばせるという実感がある」

薬王堂が標榜するのは「小商圏バラエティ型コンビニエンスドラッグストア」。西郷氏は「商圏人口で6000人いれば1店舗出せる。ドラッグストア業界でも一番か二番に商圏人口が少ないのでは」と話す。365日のうち8割ほどの日に、8割の人が必ず求める商品をしっかり並べる、というのが売り。実際、フライパンまで扱っている。

小商圏でも店舗を維持できるように気を配っているのは、「圧倒的な来店しやすさ、(クルマの)停めやすさ、店内の見やすさ、退店しやすさ。お客さまには『商品を見やすく、何もストレスなく、さっと買える店に行きたい』そう思ってお越しいただきたい」(西郷氏)

比較的駐車場を広くとり、入りやすさと出やすさに心を砕く。西郷氏は店舗開発も手がけるが、「単なる商圏人口というよりは、駐車場に求める条件をクリアできるかのほうが、店舗を出す、出さないに影響するほど」という。

特売はせず、エブリデー・ロー・プライス戦略を採用する(同社はESLP=Everyday Same Low Price戦略と標榜)。店内の商品は年間を通じて、低価格で基本的に変動しない。これが客数と来店頻度を増やし、売り上げを伸ばしている大きな要因だ。

「当社では『激得』と銘打ち、コミュニケーションしている。2013年の導入から1、2年ほどは粗利が下がるという痛みを負ったものの、いつでも安く、同じ値段なのだという信頼を得られれば、売り上げは好転する」

メーカーとも当初半年くらいは議論を交わしてきたが、始めてしまえば、1年に1回商談しておけば、ある程度の売り上げを確保できるということがわかった。

「その分、付加価値商品をどうお客さまに提案していくか、という作戦を練ることができます。メーカーの担当者にとっても返品を減らすための活動や物流の効率化といった細かい作業に集中できる。売り上げは伸びるし、経費もコントロールしやすい。そういうメリットを実感できると、ESLPを応援いただける」

ESLP戦略で派生する効果もある。定番商品6割については、POPを貼り替える必要がないということだ。薬王堂もかつてはおびただしいPOPを付けていたが、ほとんどを外した。現在は他店に比べ、販促物が非常に少ない。これは店舗オペレーションにも好影響をもたらす。

「POPは補充業務を阻害する。そうでなくても、POPは外れかけたり、ナナメになっていたりするもの。見栄えをケアしなくてはならない。メーカーは並々ならぬ思いを込めて商品を開発している。まずは、商品の"顔"をしっかり見せるべき。それをジャマする販促物は必要ない」

こう断言する西郷氏は、花王での勤務経験を持つ。同社に籍を置いていたころはむしろ、POPを積極的に提案する側だった。

「いまもメーカーからはPOPを付けてほしいと言われるし、その気持ちはとてもよくわかる。しかし、商品でお客さまに訴求する。まずそこを考えてから」 …

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