英国と日本には共通点がある。島国で、人口密度が高い。かたや武士道、かたや騎士道。象徴君主を置き、お茶が好き。全く異なる点もあるが、英国のいまは、ヒントになるだろう。現地からのレポートをお送りする。
9月1日から30日までの1カ月間、ロンドンでテムズ川祭り「トータリー・テムズ」が開かれた。コンセプトはテムズをより深く知り、親しむこと。1997年から毎年9月、市内を流れるテムズ川の67キロメートル圏内で100以上のイベントが開催される。代表的なイベントを紹介したい。
テムズの水ぜんぶ抜く?マッドラーキング
ロンドンに上下水道が整備されたのは19世紀後半のこと。それまでテムズ川はゴミ箱であり、下水であり、そして貴重な落とし物の宝庫だった。
英国中部に源流を持つテムズ川は、北海への出口近いロンドンに差しかかると、潮の満ち引きで大きく水位を変える。そのため、ロンドンは何度も水害に悩まされてきた。しかし、引き潮の際には川底から思わぬ発見が多くもたらされ、これが19世紀ロンドンならではの職業「Mudlarking(マッドラーキング)」を生む。
「マッドラーキング」とは、川底のゴミ拾いで、これを行う人は「マッドラークス」と呼ばれた。19世紀当時は貧しい人々の生業だったが、現在のマッドラークスは免許制。趣味で川底を探索する人、あるいは考古学者として活動する人々を指す。
「トータリー・テムズ」では、マッドラークスと共に川辺を歩くイベントが大人気だ。現在でも数世紀前のパイプや日用品などが見つかることも多く、歴史への探究心をそそる。同時に、未来への遺産について考え、環境問題への関心を高めるきっかけとしても注目されている。
東西の違いが浮かび上がる音楽イベント
ロンドンの観光名所「タワー・ブリッジ」は跳ね橋である。橋を上げる際に使う対荷重の収容場所として、橋の下には「バスキュール・チェンバー」という巨大な空間がある。ふだんは立ち入り禁止だが、祭では毎年、音楽会が開かれる …