販売・接客の現場で活躍する、35歳以下のキーパーソンたちに迫る本企画。これからの時代を担う彼ら・彼女らは、いまどんな思いを抱いて仕事に向き合っているのか。今回は、日本交通の千住第一営業所所属の乗務員、小助川裕哉さん(28歳)だ。
運転好きが高じて乗務員に 目指すは「観光タクシー」
1928年に創業した日本交通は、グループ売上高で日本最大のタクシー・ハイヤー会社だ。約7500台の運行車両を保有する。日本全国の営業所の中でも最大規模となる千住営業所(東京・足立)の在籍車両数は447台。乗務員数は約1100人に上る。
小助川裕哉さん(28)は、その千住営業所で、約20人の乗務員を束ねる「班長」を務めている。大学卒業後の2014年、新卒で入社した。
「就職活動では、旅行関連の企業を中心に見ていました。さまざまな企業を調べるうちに、観光客を乗せ、ガイド役も務めながら街を案内する『観光タクシー』の存在を知って興味を持ち、日本交通を志望しました。サークル活動での旅行の際などには運転役を買って出たり、バイクに日常的に乗ったりするなど、元々運転が好きだったからというのも大きな理由です」
日本交通の乗務員は、一度に16時間から18時間勤務し、その後1日休暇という勤務形態。給与は完全歩合制だ。朝9時から夜6時まで働き、土日に休むといった勤務形態とはかけ離れている。
「正直に話すと、学生の時は知らない業界だからこその不安はありました。勤務形態もそうですが、"タクシー運転手"というと、新聞を読んでタバコを吸ってお客さまを待っている─というような、何となく怖い印象がありまして(笑)」
しかし実際に入社してみると、先入観と実態が大きく異なっていたことに気づかされたという。
「日本交通では、お客さまをお迎えに上がるとき、必ず車外で待機するんです。雨の日も傘を差してお客さまを待ちます。そしてご乗車後は、必ず社名と氏名をお伝えし、あらかじめルートを確認します。限られた時間だからこそ、一つひとつの言動に気を配る。想像のなかの"タクシー運転手"と、実際とで、まったく質が異なりました」
日本交通ではサービスの標準化のための小冊子『スタンダードマニュアル77』を配り、乗務員には車内の匂いや身だしなみへの配慮も促しているという。
アプリ「JapanTaxi」が業務を効率化
日本交通では、新入社員向けに次のようなステップアップ制度を敷いている。入社後の各種研修と並行し、上長が同乗する実習を経て、一般乗務員に。その後、本人の希望や勤務態度などを加味し、選抜によって「ゴールド(黒タク)乗務員」昇格する。さらに営業所長の推薦や研修を受けた上で、全体の約1割が「スリースター乗務員」となる …