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増税を乗り越える!店頭コラボで競争力アップ

企業間コラボの意義と契約書におけるキーポイント

石川文夫氏

コラボによる成果物の権利が帰属するのは……?といったことをあいまいにしないために、コラボでは当然、契約を結ぶことになる。立教大学法学部兼任講師などを務め、ビジネス戦略と契約実務にくわしい石川文夫氏が解説する。

事業の高度化に伴い水平分業形態が普及した

現代は、国内外はもちろん、いかなる業界でも、自らの事業を進める上で、第三者とのコラボレーション(私見では日本語でいうところの「共創」)が必要な時代である。コラボレーションには複数のスキーム(枠組み)があり、どのスキームを選択するかは、慎重かつ、迅速に行う必要がある。本稿ではまずコラボレーションとは何か?について簡略に説明した上で、このコラボレーションを実行する上で必要な契約の要点について述べてみたい。

企業が事業を進めるにあたり、かつては資材や部品の調達から製品の製造・販売などの業務をすべて自社のリソースで賄う、いわゆる垂直統合形態が主流であった。これがいまでは、一連の業務が別々の企業に分散されて実施される水平分業形態へと変化してきている。

思いつくだけでも、資機材・部品調達、市場ニーズを吸い上げるマーケティング、市場ニーズを具体的な製品の形にする製品設計、試作品を製作して設計の良否を検証する製品開発、開発を完了した製品を効率よく量産する製品製造、製造された商品の販売、販売した商品の運用・保守などのアフターサービス──と枚挙にいとまがない。

さらには、これら一連の事業活動によって創出された知的財産の管理・運用、同様に一連の事業活動に伴って発生する法律問題への対応などもある。事業を進めるにあたって、他者との協力が欠かせないことは、論ずるまでもないだろう。

ここで、コラボレーションという概念を、コラボレーションに関与する当事者間の具体的な関係に着目して分類すると、次のとおりとなる。

すなわち、
①ライセンス
②共同開発
③外部委託
④合弁会社設立(ジョイントベンチャー)
⑤企業買収(M&A)の5つだ。

業界に関係なく、あらゆるコラボレーション活動は、上記の5類型の中に収まるのではないかと考える。

本稿では、プロモーションともかかわりが見いだせる、①ライセンスと②共同開発について取り上げてみたい。ライセンスや共同開発とは何か?という問いには、さまざまな見解があると考えられるが、極めて簡略な記載を試みてみよう。

たとえば、A社がビジネスを進める上で必要だが、自社にはない技術があるとする。そこで、それらを保有しているB社から、当該知的財産(権)を使用してビジネスを実施する権利の許諾を受ける。こうした行為がライセンスだ。

一方の共同開発とは、A社、B社が互いに共通するゴールを達成する上で、それぞれに不足している技術を補完し、協力しながら開発を行い、ゴールを達成しようとする行為だ。

契約の合意は原則自由 だからこそ一筋縄でいかない

ビジネス条件やリスクを含む法的な条件を考慮に入れながら、ライセンスや共同開発という枠組みを選択してビジネスを始めるためには、相手方とビジネス条件などについて交渉し、その結果をベースとした契約を締結することになる。契約に関しては、以下に記載した「私的自治の原則」が存在する。

すなわち、
①契約をするかしないかの自由(契約締結の自由)
②誰と契約をしてもよいという自由(相手方選択の自由)
③契約内容をどのように取り決めてもよいという自由(内容決定の自由)
④契約を結ぶ形式は、口頭でも文書でもよいという自由(方式の自由)

こうした「契約締結の自由」があるからこそ、他者と協力しながら、柔軟にビジネスを進めることができる。その半面、相手方との合意内容を具現化する契約書には、模範解答が存在しない。よって、いかなるビジネス交渉においても、条件交渉で自分が満足した条件を勝ち取れるか否かについては、当面している交渉だけではなく、相手との過去の取引関係や、そのビジネスの置かれたポジショニングが大きく影響する。

重要なのは相手方との種々の関係であって、契約交渉の過程で自らの要求が通るか否かが変わってくるということだ。具体的に主な要因には、以下のようなものがあると考えられる。

①売買、ライセンス契約の交渉の場合には、買主やライセンシーの立場の場合に、ビジネスを実施する上で、どうしても売ってもらいたいのか、ライセンスを供与してもらいたいのかによって、大きく交渉のポジションが異なり、交渉力に差が出る。
②交渉相手、およびその子会社などのグループ企業(以下、併せてグループ企業)との、これまでの取引関係などの有無
③交渉相手、およびグループ企業との過去における訴訟、あるいはこれまでのトラブル関係の有無
④交渉相手、およびグループ企業が保有している知的財産権(特許権など)の状況と、自社の知的財産権との相関関係など、その他のリスクの有無などである。

ライセンスと共同開発 契約の課題と対応

次に、本稿で取り上げるライセンス契約書と共同開発契約書について、重要な課題のみ取り上げてみることにする。

前述のとおり、ライセンスとは一般に、ライセンスを与える側である特許権者(ライセンサー)が、ライセンスを受ける側(ライセンシー)に対して、一定の条件の下で、産業財産権などの実施を許諾することを意味する。

ライセンス契約書で重要な条文について序列をつけることは不可能だ。というのは、契約書は相手方と合意したすべての項目が反映されたものであって、すべての条文が必須である。だからこそ契約書として成立する …

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