B.LEAGUEのB1リーグに所属する「川崎ブレイブサンダース」は2018年7月、DeNAグループへ運営権が継承された。新体制となって初のシーズンは、平均観客数が3701人とリーグ3位に。昨シーズンからの増加率は21%とリーグで2番手につける。
客席稼働率にこだわり 平均観客数リーグ3位を達成
2018-19シーズンの川崎ブレイブサンダースは、B1リーグ中地区の2位としてチャンピオンシップへ進出したものの、クォーターファイナルで敗れ、シーズンを終えた。
同クラブは、東芝の男子バスケットボール部を母体に誕生したが、2017年12月に運営権をDeNAグループに継承することで合意したと発表。2018-19シーズンは新体制での最初の挑戦だった。
平均観客数は3701人とB1リーグ3位。前年比21%の増加率は、B1リーグで2番めに多い数字だ。増加率トップは2017-18シーズンにB3から最短でB1昇格を決めた「ライジングゼファー福岡」。昇格による増員効果を考えるとブレイブサンダースの伸びは高い。
ブレイブサンダースがこだわったのは、ただ平均観客数を増やすことではなく、ホームアリーナである「川崎市とどろきアリーナ」の稼働率を上げることだった。
クラブを運営するDeNA川崎ブレイブサンダースの藤掛直人氏(社長室室長兼チケット・ファンクラブ部部長)は、「入場者数も大事ですが、満員のアリーナで観戦するという体験自体がファンの満足度を高めるため」とその理由を話す。B.LEAGUEの「満員」の定義は、観客席が85%以上埋まること。
「2018-19シーズン、ホームアリーナの『川崎市とどろきアリーナ』で開催された、土曜日と日曜日のゲームは、すべて満員にすることができました」(藤掛氏)
「川崎市とどろきアリーナ」はスポーツ専用ではなく、音楽ライブなどのイベントも開ける多目的ホールで、観客席の調整が比較的容易なアドバンテージがある。これを生かし、入場者数の予測を立てつつ、各試合の座席数を変え、稼働率の向上につなげていった。
稼働率予測では、シーズンのスケジュールが確定した時点で2017-18シーズンの実績とホームタウンである神奈川県川崎市中原区周辺のイベントスケジュールを考慮した。さらに「対戦相手によって遠征するファンの人数も変わりますし、開催日が平日か土日かでも差があります。ほかにもさまざまな要素と実績を組み合わせています」(藤掛氏)
これまでの実績で稼働率が低い座席にも改革の手を入れた。2階のアウェー側を「企画席」としてテーブルを設置。女性向けに選手からのウェルカムメッセージや応援グッズをレンタルできる「女子会テーブル」、小学生を対象にウォーミングアップに参加できたり、練習中の選手とハイタッチできる「スマイル・キッズ・テーブル」、アリーナ内で販売する生ビールを、何杯でも半額で飲める「俺たちのテーブル」といった企画を実施している。
企画は毎試合固定されているが、これも需要予測に応じて、設置数を変動させている。
座席に関しては、チケット価格の変動制を導入した一方、B.LEAGUEのクラブ多くが採用するシーズンシートの廃止にも挑戦している。シーズンシートは、事前に一定の入場料を確保できるため、経営面での意味も大きい。価格変動制の導入や販売量増加を目指すクラブはあっても、シーズンシートを止めるのは異例だ。
藤掛氏は「シーズンシートが多く占めるコート周りの座席は、バスケットボールの迫力を最も感じられる場所。そこでの観戦経験を開放することで、より多くの人にバスケットボールの魅力を知ってもらいたいと考え、廃止の決断をしました」と話す。
今シーズンについては、前年の時点で販売確約済みだったシーズンシートがあったため、廃止の効果はまだ不明だ。来季以降、本格的にその効果を検証していくことになる。
アリーナ体験を特別なものに EXCITING BASKETBALL PARK
運営権の継承にあたり、基本的に既存のクラブを維持する形を取ったが、クラブロゴとマスコットキャラクターは一新した …