トビー・テクノロジー(東京・品川)は5月17日、東京都内で「店頭・実店舗に新たな視点を導入 メーカー×小売の相乗効果を最大化するヒント」を開催した。第1部では、トライアルホールディングスの西川晋二副会長が、続く第2部ではトビー・テクノロジーのリサーチグループの斉藤陽介シニア・リサーチャー、衣川優希子リサーチャーが登壇。第3部ではライオンのオーラルケア事業部の柳田洋顕ブランドマネージャーが講演した。
小売とメーカーで連携 新たな購買体験を生み出す
第1部に登壇したのは、トライアルホールディングスの取締役副会長グループCIOの西川晋二氏。同社のテクノロジーを活用した事例を紹介した後、実店舗の展望についてこう話す。
「当社では、カテゴリーマネジメントの一環として、ID-POSデータ(会員情報が含まれた購買データ)等を取り込んだ『MDリンク』というデータ分析基盤を活用し、メーカーさまと一緒にお客さま視点の品揃え、棚割り、プロモーションに最適化できるような仕組みをつくっています」(西川氏)
また、いま注目の高まる店頭コミュニケーションとして、「リテールメディア」の取り組みにも触れた。
「店頭は非計画購買が圧倒的に多いため、店頭コミュニケーションが購買の最終決定権を握る。当社では、来店前にはアプリ、購買中には店内放送や新しい取り組みである『レジカート』メディア、購入後にはレシートクーポンと、それぞれのフェーズに合わせたコミュニケーションを行っています。特に『レジカート』メディアでは、一人当たりの買い上げ点数が15%増加するという結果が出ています」(西川氏)
最後に西川氏は「取得したデータとメディアをAIで運用していくことが今後の課題」と付け加えた。
第2部では、トビー・テクノロジーの斉藤陽介氏と衣川優希子氏がそれぞれ、アイトラッキング(視線計測)の特徴と活用の幅が広がっている事例について講演。
アイトラッキングは顧客の視線データを取得して分析すること。棚割り、パッケージ、販促物などの最適化にも活用できるが、最近は、店頭プロモーションがマス広告を含む全体のプロモーション戦略と連動できているか、断絶していないかを調査するケースも増えている。
「具体的には、見られやすい/見られにくい場所を分析して、見られやすい場所に『マスで訴求される要素』を置き、マス訴求=店頭訴求が紐づくようなパッケージに変更する、などが挙げられる」と斉藤氏は話す。
また近年、小売・飲食業界で問題となっている「人材不足」についても、来店者が注文の際に「何に困っているのか」をアイトラッキングで解析、改善することで接客効率を上げることが可能になるという。
「アイトラッキングでできる範囲は広がっており、視線の動きではなく、視線の動きから人間の『無意識』や『本音』まで観察、分析できるようになっています。今後は、購買データと視線データを連携させ、購買行動の指針を立てることも考えています」(衣川氏)
第3部では、ライオンの柳田洋顕氏が登壇。オーラルケアに関心の薄い若年層の市場を開拓した新ブランド「NONIO」の戦略について講演した。
「『NONIO』は既存のオーラルケア製品の訴求とは一線を画し、若者の抱える『嫌われたくない』という悩みに着目しました。自分では気づけない『口臭』をケアし、コミュニケーションを円滑にする商品として訴求しています」(柳田氏)
実際に「NONIO」発売後には、若年層(20歳代)の洗口液の使用率が前年から9%伸びており、マウスウォッシュカテゴリー全体の市場活性化につながっていることがわかる。
「オーラルケアカテゴリーの棚に若年層の買い物客が訪れるようになったことは、販売店さまにもご評価いただいております。また、舌の写真で口臭リスクをチェックできる『NONIO MIRROR』というスマートフォン用のデジタルコンテンツも、販売店さまのWebサイトやSNSで配信していただき、実売に結び付くような連携もできました」(柳田氏)
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