英国と日本には共通点がある。島国で、人口密度が高い。かたや武士道、かたや騎士道。象徴君主を置き、お茶が好き。全く異なる点もあるが、英国のいまは、ヒントになるだろう。現地からのレポートをお送りする。

サマーガーデンと暖炉二台、スポーツ観戦用のスクリーンを備えたパブ「Bank of friendship」。未成年や犬は入店できず、ドリンクのみ販売する。
"Would I were in an alehouse in London!I would give all my fame for a pot of ale and safety."(あぁ、ロンドンのエールハウスに行きたい!一杯のエールと安全が得られるなら、[戦の]名声など、すべてくれてやる。)──シェイクスピアの劇『ヘンリー五世』で、フランスと繰り広げた戦争で死にゆく運命の小姓が口にする言葉である。
エールはかつてハーブ(グルート)を用いて醸造したビールだった。エールハウスはパブの別名。パブは、社交場を指すパブリックハウスの略称で、ほかに宿屋を指すイン、食堂を意味するタヴァーンなど、元々異なる店が、今では総称してパブと呼ばれている。
パブの起源は紀元前1世紀のローマ時代に遡る。現在英国のあるブリテン島も、ローマの支配下で町と町を結ぶ道路が建設され、随所に旅行者が休むための宿泊所が置かれた。そこではお酒も提供され、目印としてぶどうの蔓(つる)(ブリテン島では木蔦(きづた))などが建物の外に置かれたという。ローマの撤退後、こうした施設は一時衰退するが、その後街道の発達によって再び宿泊所や食事処が置かれ、中世にはこれらの施設がワインのほかビールを提供するようになった。
目印は木製の看板になったが、当時の英国庶民の識字率は低かったため、看板に店名を象徴する絵を描くようになった。現在も最もポピュラーなパブの名前は「White Hart(白い雄鹿)」「King's Head(王の胸像)」「King's Arms(王の紋章)」「Rose and Crown(バラと王冠)」「Red Lion(赤いライオン)」などだ。
これらはみな国王への恭順を示す名称で、例えば「白い雄鹿」は14世紀に徴税目的で看板の掲示を義務付けたリチャード2世のシンボルだし、赤いライオンは17世紀のイングランド王ジェームズ1世の紋章である …