広告などで関心を高めても、荒れた店頭では購買意欲を損ねてしまう。しかし店頭をケアする人手が──。こうした課題を解決するため、技術者が巡回するサービスが始まった。
事前に得ていた情報と店頭体験とのギャップをなくす
棚卸など流通支援事業のエイジス(千葉市)は2月14日、店頭に展示している商品や広告物の修理・メンテナンスを行うサービス「Break Fix(ブレイクフィックス)」の提供を始めた。
「ブレイクフィックス」は、米国BDSマーケティング社による、店舗での顧客体験を高めるために開始した独自のサービス技術。米国では多数のトップブランドを顧客に持つ。同社と業務提携したエイジスが、国内とアジア地域でのサービス提供を担う。
「ブレイクフィックス」は、スタッフが定期的に契約店舗を巡回し、「店頭で使用感を確かめられるよう展示している商品」やデジタルサイネージなどが正常に作動するかをチェックし、不具合があれば、その場で解消するというものだ。
従来のラウンダーと最も異なるのは不具合の「報告」ではなく、「解消」できる点にある。社名は非公開だが、エイジスによる国内での本格的な提供開始に先がけ、この1月から4社が導入しているという。
「実態として、店頭を望ましい状態に保ち続けるには人手が必要ですが、慢性化しているスタッフ不足によって、それが叶わないということはあるかと思います」と話すのは、エイジスの高橋一人・常務取締役営業本部長だ。同氏が指摘するのは、「事前に得ていた情報と店頭商品とのギャップ」。
「現在では、店頭で商品を買う前に、事前に情報を得ることは珍しくありません。その際、企業発の画像や動画などに触れている可能性は高い。つまりキレイで魅力的に、理想的な姿で描かれているということです。これと、店頭とのギャップをできるだけ小さくすることが購買意欲の保持につながります」(高橋氏)
そして、人員不足が後押しする、店舗の無人化・省人化も外せない。
「自転車を共有するなどのシェアビジネスの普及にともない、不特定多数が共用するサービスの中継点なども含まれると思いますが、無人化・省人化されたサービスポイントの不具合は、顧客の心象をとても害するもの。おそらくお叱りのご連絡なども寄せられることでしょう。その対応コストも含めると、初手で不具合を防ぐというのが肝要になってくると考えられます」(高橋氏)
店頭の状態は売り上げに影響?メンテ以外の付加サービスも
荒れた店舗では、メーカーや店舗に対してマイナスのイメージを持ち、せっかく来店しても商品を買わずに出ていってしまうことは想像に難くない。それを放置すればするほど、販売機会を逃していることになる。
エイジスが提供する、国内の「ブレイクフィックス」では、調査も同時に行い、店頭のコンディションがどれくらい販売に結びつくか、データ化することを検討している。単に店舗を巡回して、機械的に修理・修繕するだけではなく、レポーティングとフィードバックをしたり、あるいは買い物客からアンケートを取るといったことを想定する。
「当社がご提供しているリテールサポートサービスでは"作業"を販売するのではなく、"価値"をご提供したいと考えています。各サービスの導入目的はさまざまで、細かな点は柔軟にカスタマイズしています。このような個別対応もご評価をいただいています」(高橋氏)
店頭で商品を確かめたのちにオンライン購入する「ショールーミング」が課題とされたのも今は昔。まもなくオンラインで商品を調べてから店舗で買う「Webルーミング」が着目され、現在では、さわる、試してみるといった、実店舗ならではの体験に視線が集まっている。
「店頭でよりよい体験が提供できるか、が売り上げを左右するのは間違いないと思います。ただ、体験というのは話題化のためのスポット企画だけではありません。平時から店頭の商品を保全することが両翼となって初めて、成果につながるのではないでしょうか」(高橋氏)
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