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「5G」でさらに加速する?IoTで変わる実店舗

長期的視点に立った 1to1マーケティングの実践

顧客の特性をつかみ、どうアプローチするかの方針を定める「RFM分析」だが、とらえ方次第で落とし穴にはまってしまうケースがある。東京大学大学院経済学研究科の阿部誠教授が解説する。

デジタル移行を始める前に

事業戦略の拡大には、利益率の向上が不可欠です。そこで、既存顧客の維持に力を注ぐのもひとつの手です。なぜなら新規顧客の獲得コストは既存を維持するよりも高くなりやすいからです。さらに、優良顧客がどのような特徴を持っているのかを見極められるようになると、新規獲得施策の効率も高めやすくなります。

CRM(顧客関係管理)の現場では、優良顧客を判別するために、リセンシー(R=直近の購買からの経過時間)、フリクエンシー(F=観測期間中の単位時間あたりの購買回数)、マネタリバリュー(M=平均購買金額)の3つの購買行動指標で顧客をセグメント分けする、「RFM分析」という手法が広く使われています。これは、RFMの3指標が、その顧客の購買行動を端的に集約していることを示唆しています。

CRMで競争優位を確立するには、長期的視野に基づいて優良顧客を識別し、適切なマーケティング活動を通じて、顧客との関係を構築することが重要となります。そのためには、セグメント・レベルで過去を振り返ったRFM分析を、顧客個人レベルの視点で未来を見すえた顧客生涯価値に発展させることが有効です。この記事では、1 to 1マーケティングがいかに強力になるかを、限られたスペースですが、ご紹介します。

CRMの現場では残念ながら、まだID-POSのような「誰が」を特定し、活用することが十分、普及していません。顧客へのアプローチ(コミュニケーションやセールス・プロモーション)を一人ひとり変えれば、生涯価値を効率的に増やすことができるため、売り上げや純利益を長期的に増加させることができます。

また、既存顧客のプロファイリングから、新規顧客の獲得に関する有益な知見も得られます。分析の枠組みと顧客へのアプローチの仕組みを構築できれば、あとはITがかなえてくれます─難しい?面倒くさい?そんなことをしなくても売れはするし…という先入観をなんとか払拭したいと思います。デジタル移行を始める前に、改めて考えておきましょう。

RFM分析の落とし穴

最初に、先に挙げたRFM指標自体は、顧客の購買特性を直接表わす指標ではないこと、またそれを理由としてRFM分析を過信することの危うさについて説明します。

まずリセンシーは、分析者の観測終了時点に大きく左右されます。たとえば、最終購買から30日経過した時点(つまり、リセンシーが30日)では、フリクエンシーの高い顧客(たとえば平均ひと月に3回)のほうが低い顧客(たとえば平均3ヶ月に1回)よりも離脱している確率が高くなります。結果として、同じリセンシーが観測されても顧客の生涯価値は異なるということです。

フリクエンシーも、顧客の購買特性である購買頻度とは異なります。

購買頻度は、顧客が生存している期間中の購買頻度(=購買回数/生存期間)です。一方、フリクエンシーは観測期間全体の購買回数をカウントして時間で基準化したもの(=購買回数/観測期間)を指します。

したがって顧客が途中で離脱していれば、観測期間は前半の生存期間と後半の離脱期間の両方を含むため、フリクエンシーは購買頻度より小さな値になります。

さて、顧客の購買特性である生涯価値を算出するためには、その顧客の離脱を把握する必要があります。しかし年会費などの支払い義務がなければ、離脱する顧客は単に購買を止めるだけで、わざわざ離脱を申告することはしません。通常、このような非契約型CRMの場合、企業は独自の経験則に基づき、たとえば顧客が3カ月購買しなければ離脱したと判断したりします …

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