毎日多くの人が訪れる店頭は、購入意向を生み出すプロモーションメディアとしての機能を持つ。デジタル技術を用いれば、その機能をより強められるだけでなく、業務効率化を図ることも可能だ。
総数9000台近くのIoT端末を店内に設置
トライアルホールディングスは4月19日、「メガセンタートライアル新宮店」(福岡・糟屋)を、さまざまな機器を活用したIT店舗としてリニューアルオープンした。
代表的な機器は、通路上のレールに設置されている「リテールAIカメラ」1500台だ。文字通りAI(人工知能)技術を用いたカメラで、来店人数を数えたり、商品画像を識別して、欠品状況などを検知したりできる。
ほかに「電子プライスカード(棚札)」7000枚、タッチスクリーン付きの「レジカート」200台のほか、デジタルサイネージ210台も配備した。デジタルサイネージでは「リテールAIカメラ」で、来店者が「カートを押しているか」「カゴを手に提げているか」を判別し、前者には複数商品を、後者には単品購入を勧めるなど、広告を出し分けている。
こうした機器はほとんどがインターネットに接続した、いわゆるIoT機器だ。「レジカート」は店内の無線LANに、電子棚札は独自の無線周波数を使用。「AIカメラ」は無線と有線LANを併用している。
来年の春以降には「5G(第5世代通信システム)」の本格導入が見込まれる。トライアルホールディングスのグループCIOを務める西川晋二副会長は「5GでIoT機器にまつわる課題が解決されるのは、ぜひ期待したい」と話す。西川副会長が考える現状の課題はこうだ。
「まずはコスト。いまでもIoT機器向けの従量課金制の費用を抑えたプランはありますが、さらに発展させて導入を容易にしてほしい。また、特に重要なのは死活監視。すべての端末がきちんと稼働しているかを人が確認するのは大きな負担です」
さらには、店舗内に数多くの端末が置かれることになるが、Wi-Fiや有線LAN、短距離無線など種々の通信手段を用いながら干渉を防ぐなどといった、専門知識を店舗側が持つのはあまり現実的でない。
明瞭に商品の魅力を打ち出す店内にふさわしい広告のあり方
「電子値札」でいまできているのは、ネットを介した中央制御による表示価格の変更だ。一つひとつ入れ替えずにすむだけでも大きなメリットだが、ポイントは、需要を見ながら柔軟に価格を変更できる点だ。
「一部のEコマースで見られますが、何かのタイミングで特定の商品が話題になったり、あるいは天候情報と連動するなどして、リアルタイムに価格を変えることで売り伸ばしを図るケースがあります。実店舗では、POSとの連動や入れ替えの手間などがあるので、これができませんでしたが、電子値札なら可能です」 …