アパレルを主軸としながら、ストライプインターナショナルが事業領域を広げている。アパレルブランド「koe」の名を冠したホテル「hotel koe tokyo」に続き、3月21日にはドーナツファクトリー「koe donuts」を京都市にオープンした。

テイクアウト用のドーナツは来店者がセルフで選び、レジに持っていく形式。見栄えがするよう什器にもこだわった。ドーナツを食べるという行動を通じて、理念への共感を促す。
ⒸMasaki Hamada(kkpo)
モノとしての価値だけでなく背景にある物語を伝える店舗
3月21日、入店待ち約100分の行列ができたドーナツ店が京都市にある。ストライプインターナショナル(岡山市)がオープンした「koe donuts(コエドーナツ)」だ。
同社のアパレルブランド「koe」を冠し、開店から10日間で売上計画比を70%上回り、すべり出しは上々だ。初年度は2億円の売り上げを見込む。
「アパレルが、なぜドーナツ店を開くの?」という疑問を抱く向きは少なくないだろう。ストライプインターナショナルkoe事業部の星野淳二事業部長は、「『ドーナツを食べる』という、誰にでもできる簡単な行動を通じて、当社の理念への共感を促すため」と話す。
ところでドーナツ業界と言えば、ミスタードーナツがここ数年、店舗売上高を減らしてしまっている。ただ、同社が改装を進めた店舗31店の実績では平均売上高が5.3%増となっており、特にイートインでは改装店以外の全国店舗が0.7%減の半面、改装店は8.9%増となっている。
ドーナツ市場の現況をどう見るかは別に、確かなのは「従来のやり方のままでは立ち行かない」ということだろう。星野氏はこう見る。
「ファッションにも表れていますが、若年層の消費者は、商品自体ではなく、背後にある考え方や物語に価値を見出す傾向があります。服も、モノとしての価値だけではなかなか売れません。ドーナツもモノの価値だけでは売れづらくなってしまったのではないでしょうか」
一方、考え方や物語は、いくら言葉を尽くしても伝わらないところがある。崇高な企業理念をとうとうと語られたところで退屈だ。むしろモノの形を取ったほうが直観的に理解できる。ファッションデザイナーの考え方や価値観、姿勢が具現化される文化がある。服を通じてデザイナーの物語を消費しているのだ。
「ドーナツを食べて当社の理念を体感していただく場、というのは、こうした点でファッションと共通点があります。つまり、モノとしての価値を訴えるだけでなく、奥行きのある物語が感じられるとよいのではないか、ということですね」(星野氏) …