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販促会議 企画コンペティション

「販促コンペ」オープニングイベント開催 企画は「本音」や「欲望」からつくる

4月5日、第11回「販促コンペ」オープニングイベントとして、最終審査員を務める嶋浩一郎氏と尾上永晃氏の対談が行われた。「本屋大賞」「東急池上線フリー乗車DAY」などの企画が生まれた経緯などもひもとき、企画の考え方や販促コンペのポイントについて話した。

イベントの様子。平日にもかかわらず約120人が来場した。

しょうもなさ・不平不満 企画の種はここに隠れている

販促会議企画コンペティション(販促コンペ)はことしで11回めを迎える。第1回から数えると、のべ2万1744本の企画書が応募されてきた。

応募者のバックグラウンドはさまざまだ。毎回、広告会社のプランナーはもちろん、デジタルエージェンシーやイベント会社、PR会社など幅広い領域のプロが挑む。さらに第8回では大学生が、第7回では百貨店の社員がグランプリを獲得するなど、挑戦者は企画を本業とする人にとどまらない。

審査時は、氏名や所属などの情報をすべて匿名化し、審査員、最終審査員ともに企画内容のみを評価する。

「さまざまなコンペティションがある中で、『販促コンペ』は最もニュートラルな賞です。課題解決のためならば、どんな切り口のアイデアであってもフラットに並べて評価しています」(審査員長を務める博報堂ケトルの嶋浩一郎氏)

では、審査時には企画のどんな点に視線が向けられるのか。これはひるがえせば「何を足がかりにして企画を立てればよいか」につながる。

4月5日に開催された、「第11回販促コンペ」最終審査員を務める電通の尾上永晃氏と、前述の嶋氏の対談からは、「言われてみれば当たり前に感じるが、その手があったか」「この企画に触れたターゲットは、確かに動きそうだ」「この企画は夢物語でなく、実現できそうだ」と見た人に思わせられるかどうか、というヒントが浮かび上がってくる。

嶋氏は、「『いままで誰も気づいていなかったけれど、言われてみればそうかも』と思わせるには、徹底的にターゲットの心情を洞察することが欠かせません。ターゲットが言語化できていない隠れた感情や欲望を見つけられている企画書は強い」と指摘する。例に挙げたのは意外にも主婦に人気の女性誌『Mart』(光文社)の編集部の視点だった。

「光文社の女性誌の編集部員の日課は読者調査、いわゆる『読調』なのですが、その深さが半端じゃないんです。だから、調理鍋を『あなたの台所の素敵なインテリア』って紹介したり、主婦の気持ちを汲み取った企画を立てられる。メーカーサイドはおいしい料理が調理できる鍋として売りたいんでしょうけど、『美味しい煮物のできる鍋』って特集を作っても売るのは難しいでしょう」(嶋氏)

同誌は、毎日繰り返す調理の環境をもっと彩りたい、インテリア的に使えるキッチンウエアが欲しいという主婦の言葉にならない気持ちを「読調」から読み取った。

「いまでこそ当たり前のように感じますが、『Mart』がそこにたどり着くまでに積み重ねた読者研究は並大抵のものではないはずです」(嶋氏)

それでは、「隠れた感情や欲望」はどうやって見つければいいのだろうか。尾上氏は「自分は、"人間のしょうもないところ"に目を向けるようにしています」と話す。

「これはたとえ話ですが、『社会に貢献したい!』という人がいて、じゃあ、と社会貢献できそうな企画を用意しても、動く人は一部だったりします。それで『貢献したい』の裏側をもうちょっと覗いてみると『モテそうだから』とか、何かしらの本音が見えてきたりする。こういう"しょうもない"というか、なんだかにくめない"人の業"を叶えるほうが人は動くし、それを探すようにしています」

尾上氏が手がけた「東急池上線フリー乗車DAY」(2017年)も、ある意味"しょうもない"点に目をつけた企画だ。元になっているのは「なんだかんだ言ってもタダが好き」という感情。東急池上線を1日無料で乗り降りできるようにした結果、通常の3.7倍の利用客が集まり、沿線にある商店街やちょっとした観光スポットへの集客に成功した。

「無料という言葉が巷にあふれているのは、みんなが好きだから。なんでも良いから行くきっかけを作りたかった。なのでタダにしてみたらどうかと」(尾上氏)

嶋氏も「そう、そういう本音のほうが人は動きやすいんです」と語る。

「本音は、文句を言っている人やイライラしている人から見つけることもできます。ふつう本音を言葉にするのは簡単ではないのですが、文句や不満は本音の欲望に近いんです」(同)

16年続く本屋大賞も、発端は既存の文学賞の選考結果に対する書店員の不満だった。不満があるということは、その文学賞の受賞作よりも、もっとお客さんに勧めたい本があるということだ。読者としても本を売るプロが勧める本と聞けば興味がわく。

そして、「その装置を誰もつくったことがない」となれば、「斬新なアイデア」ということになる。企画を見る人には「なるほど言われてみればそうだ。そうか、その手があったか」という読後感がもたらされる。

「企画をヒネる必要はありません。同じ本音、欲望を抱えた人が10人いたら、素直にそれを叶える装置をつくればいいんです」(嶋氏)

なるほど、それはそうだけど実際にできるんですか?

3億円あげると言われて断る人はおそらくいないが、かと言って全員に配ることは不可能だ。「たしかに本音を突いていて人が動くだろう」と思えたとしても、実現できないのであれば、その企画は無用の長物だ。

「つまり、企画に実現可能性は欠かせません。なので面白いアイデアを世に送り出す人ほど、それを叶えるための各種の知識を日々蓄えているものなのです」(嶋氏)

「東急池上線フリー乗車DAY」でも、無料にするには法律上の制限や他路線とのかね合いなど、クリアすべきハードルはいくつもあった。

「そしていくらかかることになるのか、という計算ですよね。広告を出す費用と、無料にするコストをてんびんにかけて、正味どちらが安いか、投資効率がいいか、という。それを見せて、提案先の東急電鉄の方々も、不可能な仕事ではないし、挑戦してみましょう、と言ってもらえたのではないかと思います」(尾上氏)

対談の最後に嶋氏は「いい企画は、みんなが見た瞬間に『いけそう』とわかる企画です。言葉を重ねてあれこれ説明するより、本当に動きそうというリアリティと実現可能性に気をつけて、応募者の皆さんの得意技で攻め、その手があったか!と思わせてください」とエール。

尾上氏も「どんな手を使ってもいいというのは、一方で言い訳ができないので怖い面もあります。『販促コンペ』を利用して、自分の経験を総動員したうえでおもしろいと感じられることを探り当てる経験をしてほしいと思います」と語った。

昨年、グランプリを受賞した作品「ブラックサンダーエクスチェンジ」

博報堂ケトル
代表取締役社長・共同CEO
嶋 浩一郎氏(審査員長)

1968年東京都生まれ。1993年博報堂入社。CC局で企業のPR活動に携わる。01年朝日新聞社に出向。「SEVEN」編集ディレクター。02~04年に博報堂『広告』編集長。04年「本屋大賞」立ち上げに参画。06年「博報堂ケトル」を設立。『ケトル』の編集長などメディアコンテンツ制作にも積極的に関わる。2012年内沼晋太郎と本屋B&Bを開業。

電通
プランナー
尾上 永晃氏

東京理科大建築大学院卒。2009年電通入社。とにかく商品が好まれて売れるような仕掛けばかり考えている。ACCグランプリ、TCC新人賞やカンヌ、メ芸など受賞。海外賞審査員なども。毎日8時間寝ている。

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