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THROUGH BOUNDARIES

答えのない問いへの答えはどこからやってくるか

宇野 全智(禅僧/曹洞宗総合研究センター研究員)

世の中には答えのある問いのほうが実は少ない。考えを続けることも、やめることもできる(写真=123RF)

おばあさんが、若い禅僧のために庵を建て、修行を助けることにしました。禅僧は懸命に修行し、20年が経ちます。ある日おばあさんは「修行の進みぐあいを確かめよう」と、世話を手伝っていた若い娘に「お坊さんに抱きついて誘惑してごらん」と命じました。

娘がそのとおりにすると、禅僧は平然と「枯木寒巌に倚りて三冬暖気無し」(凍った岩に枯れ木がもたれかかっても温かくはなりません)と答えました。

これを聞いたおばあさんは、烈火のごとく怒ります。「私はこんな俗物を20年も供養していたのか。忌々しい!」と、すぐさま禅僧を追い出し、庵を焼き払ってしまいました。

これは、中国宋代に編集された『碧巌録』所収の「婆子焼庵」という公案(禅問答)です。実に面白い問答で、普通なら褒められそうな答えにおばあさんが激怒してしまう。それはなぜか、どのように答えればよかったか。公案には正解はなく、各々考えることが求められます …

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