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いまこそ物語論について語ってみよう

僕たちはどうバズるか─成果へつなぐバズの文法

宮地成太郎氏(電通)

「バズ」──日本では平成も後半に入ってから、人々の口に上るようになった言葉だ。うわさ話がけたたましく飛び交う、人声がさわがしく聞こえるさまに用いられるが、もともと人はそのように話題を消費するのが好きなものだ。それがWebによって視覚化されたのが、平成の特色のひとつと言えるだろう。プロモーションにも生かそうという動きが出るも、一筋縄ではいかない。電通のプランナー宮地成太郎氏が考える、バズの文法とは。

バズと商品の間にあるつな引きを制御する

「バズ」は、瞬間的に不特定多数の人が話題にし、また、別の誰かに広めようとすると起きます。どうすれば「バズる」だけでなく、商品が売れるなどの結果に結びつくのでしょう。僕なりに考えている、バズの物語文法をご紹介したいと思います。

「バズる」と「売れる」の間にはつな引きがあります。

実は「きっとバズるだろう」という期待が抱けるエリアは数をこなしたり、Web上で話題になるものを細かく見ていれば、おのずと輪郭を持ち始めます。とても極端な話ですが、メントスコーラ(※1)の文法に従えば、ある程度はバズるのです。

※1 ペルフェティ・ファン・メレのソフトキャンディ「メントス」を、コーラなどの炭酸飲料に入れると、急激に泡が立ち上る現象。YouTubeで圧倒的な再生回数を誇り、その後の「実験動画」の走りとなった。現在も投稿する人は多い。

しかし、僕たちは「バズりたい」のではなく「売れたい」。クライアント企業のビジネスに成果を残したいのです。「バズったけど売れなかった」を全力で回避したい。いや、正確に表現すると、僕個人としては、「バズりたい」という気持ちが底にあります。が、ただバズるのではイヤで、結果につなげたい。

そのためなら「バズ」を妨げるけど広告には必要な要素─たとえば「商品説明」をあえて入れる、という挟持みたいなものもあります。入れること自体は誰にも評価されないが、やる、といったタイプのものです。その入れ方にはある種のコツもあります。後ほどお話しします。

つな引きに話を戻すと、バズと商品の間のどこに均衡点があるべきか。つな引きですから固定されません。常にせめぎあいがある。広告にはさまざまな、目に見えない「変数」があります。予算、時間、メディア環境、クライアントの状況、そのときの広告の嫌われぐあい……などです。

均衡が崩れると、バズるだけで売れない、商品の説明だけで広告でない、あるいは"炎上"してブランドを壊す、ということになります。いろいろな変数のなかに表現がある。

「TikTok」と「M-1」の間 どんなバランスで成立したか

バランスのとり方を具体例にそってお話ししたいと思います。広告では関係者が多岐にわたることは珍しくありません。その場合は変数がさらに増えます。「TikTok」のユーザー獲得に始まり、朝日放送の「M-1グランプリ 2018」の番組宣伝にもなった「全力M-1チャレンジ」は、まさにそういった例でした。

大元の主眼は、「TikTok」のユーザーを増やすことでした。結果は、「TikTok」で最初に流した漫才リップシンクの動画は、単体で2300万回再生されダウンロードを促進しただけでなく、M-1の視聴率も伸びました。関東地区平均で18.8%の歴代3位、関西地区平均は28.2%の歴代5位でした。大会は通算14回めで、関西での視聴率の伸びは3年連続。

特に番組としては絶対に獲りたい層であるT層=19歳以下の視聴者を増やすのに貢献できたのは、とても喜ばしいことでした。

当時の思考経路をたどってみたいと思います。「TikTok」のアイデンティティを考えると、簡単に「リップシンク(口パク)」でき、動画が投稿できる点。ただ、ここで歌モノに走るのは安易です。すでに多く投稿されていますし、新規性がない。

そこで「漫才はどうだろう」と考えました。「人気の漫才師の相方になれる」というのであれば、やってみたい人が増えるはずです。しかし、「TikTok」で「リップシンクして漫才ができる」のでは、アプリの中で閉じてしまう。もしかしたらほかのソーシャルメディアに波及するかもしれませんが……。

早い話、テレビを巻き込めればバズは最大化できます。ではテレビを呼び込むためにどうするか。ちょうど「M-1グランプリ」が間近に迫っていました。放送局である朝日放送はもちろん視聴率がほしいはず。視聴率を高められる見込みがあれば、乗ってくれるかもしれません …

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