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企画力のレベルアップ

「企画の入り口」を確かなものにプレゼンに不可欠の合意形成

加我俊介氏(電通/電通ライブ)

提案する企画の精度を高めたい──企画にたずさわるすべての人がそのように考えるはずだ。通る確率を高めるだけでなく、実施時の効果やかかわるすべての人の時間をムダにしないためにも重要だからだ。そのために必要なのが「合意形成」。オリエンから企画会議、企画書、プレゼン、さまざまな側面から、電通/電通ライブの加我俊介氏が「合意形成」の図り方について語る。

電通/電通ライブ 加我俊介(かが・しゅんすけ)氏
従来のマス広告に、デジタル・イベント・PR等を組合せた立体的な広告コミュニケーションを数多く手がける。最近では、広告キャンペーンに限らず、展覧会や店舗の企画プロデュース、TVドラマ制作、自社サービス開発に至るまで幅広い領域で活躍。

──プレゼンテーションで最も重視していることを教えてください。

提案する我々と、それを聞く広告主の皆さまの思考のベクトルを一致させ、同じスタートラインに着くことを重視しています。

オリエンを受けていきなり企画を始めるのではなく、聞いた話を咀嚼し、ロジックを組み立て、検証するところから始めます。

もし、スタートラインを共有できずに企画し始めてしまうと、広告主の求めている解とズレが出てきてしまいます。また、万が一採用されたとしても、制作の過程でほろこびが出てきてしまうことがあります。プレゼンをうまく進めるだけではなく、その後の企画を正しい形でアウトプットするためにも重要だと考えています。

──ベクトルがズレてしまう原因は。

広告主の皆さまと我々広告会社は、基本的には同じ方向を向いているはずです。それは人間、誰しも現状を悪化させようとは考えないからです。真逆を向くことは決してありません。

ただ、違いがあるとすれば、広告会社は、よりよい表現をつくりたいというクラフトマンシップに傾倒する傾向があるのに対して、広告主側は、もちろん悪いものを作ろうとは思いませんが、商品を売ることを最優先します。また、これとは別に、社内的な調整や制約事項があることも珍しくありません。大きく同じ方向を向いてはいても、それぞれに異なる力学が働き、ベクトルが微妙にずれてしまうのです。

クリエーティブディレクターやコミュニケーションディレクターと呼ばれる我々は、アウトプットの質を高めることはもちろんですが、こうしたベクトルのズレを調整することも重要な責務だと思います。

──どのようにしてベクトルを揃えるのでしょうか。

商品を売るためにプロモーション施策が必要で、その施策はターゲットにきちんと届かなくてはなりません。さらに好意的に受け止めてもらう必要もある。おおよそこうしたゴールイメージに対して、与件が提示されます。

しかし読み解いていくと、与件の中には必ずしもゴールに直結しないものも混ざっていることがあります。あるいは目的達成には欠かせないはずの条件がない場合もあります。

日常生活のコミュニケーションでも同じだと思いますが、「この人はいま、なぜこんな発言をしているのだろう」──そういった違和感や認識のズレを察知する感覚が大切です。

違和感があるときは、その背後になんらかの事情がある場合が多い。そういった違和感を抱いたら、怖気づかずに聞く。先に事情を把握しておけば解決できるかもしれません。

また、欠けている前提条件がある場合はそれを事前に埋めておく。

必要があれば、「この与件は、こうであるべきではないでしょうか」というふうに、プレゼンテーションの場でありながらも、オリエンテーションの上書きから始める場合もあります。これらのプロセスを通じて、双方の認識をすり合わせながら、思考の方向性に対する合意形成を図っていきます。

──いつから、そう考えるようになったのですか。

明確に意識しだしたのは、ここ数年のことです。

ひとつは、ドラマ制作や店舗・展覧会の企画プロデュースなど、これまでさまざまなタイプの仕事に携わらせてもらう中で、自分の能力の限界、自分一人ではできないことの多さを痛感したからだと思います。どの仕事もチームでないと実現できないことばかりでした。

それを実感したころと時を同じくして、管理職のような立場になり、自分より若いスタッフを率いる機会が増えました。チームメンバーに恵まれまして、「この子たちはなんて優秀なんだろう!」といつも思っています。

そうした若い才能と切磋琢磨して、作り手としてのスキルを伸ばす、という方向もあると思います。しかし、人の才能が受け入れられて、というとかっこつけ過ぎなのですが、受け入れられる年齢になったのかもしれません(笑) …

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