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販促の仕事に携わる人の教養講座

消費者の決定方略を読みときプロモーションに活用する

竹村和久教授(早稲田大学)

「買う」か「買わない」かを消費者はどのように検討し、購入商品を決めているのだろうか。例えば日用品は、安ければ安いほど購入欲求が高まるかもしれないし、逆にセールで安くなっていても欲しくならない服もあるだろう。消費者は意識せずともなんらかの意思決定をしているはずだ。消費者の購買商品の決定方法、すなわち「決定方略」の基本的な分類を把握すれば、より消費者行動により沿ったプロモーションの企画に役立てることができる。ここでは決定方略について、早稲田大学の竹村和久教授に聞いた。

多属性意思決定と決定方略

どのようなプロモーションをすれば、商品がもっと売れやすくなるのか。そのヒントとなるのは、消費者がどのようにして商品を選び、購入を決めているのか、だ。

複数の商品という選択肢の中から特定のひとつを選び出し、買う──これは、「意思決定」という人間の認知的活動に属する行為だ。なぜなら「意思決定」とは(一般に)、ある目標を達成するための複数の手段を考え、分析し、一つを選んで実行することだからだ。つまり、「意思決定論」はプロモーション施策のヒントとなる。今回の限られた紙幅では入り口までとなるが、その先には従来のプロモーション施策をよりよくする、新たな世界が開けているはずだ。

さて、買い物をはじめ、消費者のほとんどの意思決定は、【多属性意思決定】とみなせる。「多属性」というのは、複数の選択肢からひとつを採用する際に、属性=判断のポイントがいくつかある、ということだ。

選択肢=商品を選ぶ際、属性となるのは「価格」「基本性能」「デザイン・外観・形状」「メーカー」などだ。ほかにも多くの属性=判断ポイントがありうる。いくつかの選択肢=商品を吟味する上で各商品の持つさまざまな属性=判断ポイントがかかわってくる、と理解してほしい。本稿では、この【多属性意思決定】を扱う。

話を進めるためにもうひとつ、言葉を用意しておきたい。【決定方略】だ。わたしたちが買い物をするのは、不便を解消したいとか、味わいを楽しみたいとか、着飾りたいといった目的を達成するためだ。しかし、目の前にはいくつもの選択肢=商品がある。選択の結果、目的が100%満たされることはまれなため、80点なり、90点なり、できるだけ満足できる選択肢を採用したい、というのが人情だ。

実際、人間は「ある程度満足できる」選択のために、いろいろな〈作戦〉を立てることがわかっている。購買の意思決定における「(決定)方略」とは、さしあたり〈なるべく満足できる買い物のための作戦〉だと考えてほしい。

決定方略を把握する

決定方略を把握するためには、いくつかの要点がある。パソコンの購入を例にとろう。話をわかりやすくするために、属性は「価格」「デザイン」「機能」の3つに限定する。選択肢は、メーカーAからDが売り出している4つの商品としよう。

商品Aの各属性(価格・デザイン・機能)を見て、ある程度満足できそうだと思えば、即座に買う人。すべての商品の全属性をつぶさに見て、よりよいものを選び抜く人。買い物のスタイルはさまざまだ。こんなタイプの人もいるかもしれない。「価格」が最も重要な属性で、商品Aから商品Dまで、「価格」で比べる。この時点で一部の商品が脱落する。残ったもので次に重要な「デザイン」を比較する……といった具合だ。

同じ商品でも、人によって決定方略=作戦は異なる。同じ人でも商品カテゴリーごとに決定方略が異なることもめずらしくない。同じ決定方略でも、単に商品に触れた順番で結果が異なることも多い。だから、私たちは、いろいろな決定方略を知っておく必要がある。

属性間の優先順位もさることながら、単に評価される時系列的な順番も、購入する商品を左右することも覚えておいていただきたい。これは、決定方略を把握するための要点だ。

代表的な5つの決定方略

では、これまでに見出されている決定方略について、代表的なものを紹介しよう。

加算型──これは、すべての選択肢において、すべての属性を検討し、全体的な評価が最もよかった選択肢を採用する決定方略だ。先ほどのパソコンの例なら、こうなる。説明を簡単にするために、この人物は点数を付けて評価していることにしよう。以下の例でも同様だ。

「商品Aは価格は10万9800円か(60点)、見た目はあまりよくないな(60点)。機能はすごくいいのだが(90点)。全体的に見ると商品Aはいまいちだ(合計210点)。」「商品Bは、7万9800円で80点。見た目も70点。機能も70点。まあよさそうだ(合計220点)」。以下、「商品Cはとてもいい(240点)」。「商品Dもそこそこいいな(230点)」──といった判断だ。この場合、買われるのは「商品C」だろう。

加算型の商品は、すべての属性を同じく評価する場合と、属性ごとに重みが異なる場合とがある。価格を最も考慮するなら、商品Dが選ばれるはずだ。

連結型──連結型の決定方略は、各属性ごとに必要条件を設定する。一つでも必要条件を満たさない場合、ほかの属性の評価にかかわらず、その選択肢自体を外してしまう。この決定方略にもとづいて意思決定する場合、全属性にわたって必要条件を上回った最初の選択肢が選ばれる。

例えば、すべての属性で「必要条件70点以上」とする人が、商品Aから順に評価したとき、最初に条件をクリアするのは商品Bだ。この場合、残りの商品CやDは検討されない。この決定方略は、H.A.サイモン(1957)の「満足化原理」に基づく決定に相当する。

分離型──この決定方略は、各属性に十分条件を設定する。一つでも十分条件を満たす属性があれば、ほかの属性の評価にかかわらず、その選択肢が採択される。例えば、すべての属性で「十分条件80点以上」とする人が、商品Aから(意図なく)順に評価する場合、商品Aは、価格とデザインは80点未満だが、機能が80点以上なので、商品Aを買う、ということだ。この場合、商品B、C、Dは検討されない …

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