みなさんは「主人公」という言葉に何を思い浮かべますか。小説や映画、CMでも、「物語の中心人物」が「主人公」でしょう。でもこの言葉、禅で用いると、別の姿を現します。今回は「主人公」から、禅の人間観の面白さをお伝えしたいと思います。
昔、中国に瑞巖彥という和尚がいました。彼は毎日、「おい、主人公」と呼びかけては、自ら「はい」と答えていたと言うのです。なぜそんなことをしていたのでしょうか。
この「主人公」、メインキャラという意味ではありません。禅では、主人公は「あるべき本来の姿」を意味します。
重要なのは「あるべき本来の」という部分です。「あるべき」とは、仏という言葉に集約される理想の人間の在りようとして、自己が正しく実現され、立ち現れていること。「本来の」とは、それは最初から人に内在しているものだということ …
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