販売・接客の現場で活躍する、35歳以下のキーパーソンたちに迫る本企画。これからの時代を担う彼ら・彼女らは、いまどんな思いを抱いて仕事に向き合っているのか。今回は「Hibiya-Kadan Style CIAL桜木町店」の店長、南澤愛子さん(27歳)だ。
アパレル志望から転身 色を生かせる仕事へ
最後に自宅に花を飾ったのはいつごろのことだろうか。生花を買うことが習慣になっている人もいれば、まったく経験がないという向きも少なくはないだろう。
花・植木の小売は平成の初めごろが出荷量・売上高・店舗数のピークで、以降は減少を続けている。たとえば、2017年の切り花出荷量は37億400万本で、ピーク時から20億本近く減少した。
そうした業界に飛び込み、花をもっと普及させたいと生花店で働くU35がいる。日比谷花壇の南澤愛子さん(27歳)だ。
南澤さんは、4年制大学の服飾学科出身。特に色について関心を抱き、ゼミも色彩学を専攻。就職活動時、当初はアパレル業界を志望するも、就活を続けるなか、「色」の知識をぞんぶんに生かせる仕事が見つかった。それが生花店だった。
「お花も色の組み合わせが要のひとつですし、老若男女すべてをターゲットにすることができます。花を見てきれい、と感じるのは誰しも同じだと思うので。学んだことを生かしながら、喜んでいただける仕事に飛び込んでみよう、と」
花で色の組み合わせ、と聞くと、何本かの花をどのように合わせるか、がまず思い浮かぶ。しかし、それだけではない。
「たとえば花瓶が透明なのか白色なのか色付きなのか。飾る場所の背景となる壁の色、照明の色なども関係します」
平たくいえば、買ったあとに「思ってたのとちがう!」が発生するリスクがある。
「だからこそ生花店での接客では、とにかく話すことが欠かせません。ギフトなら贈る方も贈られた方がどのように飾られるか、最終的な見え方を知ることがない可能性もあります。ご満足いただけるものを作るには、よくよくお話をうかがわないとだめ。かなりコミュニケーションが重要な仕事だと思います」
日比谷花壇は、花の扱いやフラワーアレンジメントが未経験で入社する人もいるが、南澤さんも、花を扱ったことはなかった。来店客の意図を汲み取り、花束を構成するのは一朝一夕で身につくものでもない。
「当初、横浜そごう店で勤務していたころは、先輩社員の手元を観察したり、閉店後に練習したりしていたのですが、用途を伺うところまではできても、実際に花をまとめる段になるとバトンタッチ。早く自分でも作れるようになりたかったのですが、─」
早い話が、事実上のブランクができた。2年めには本社勤務となったのだ。しかし、再び現場に立ちたいと要望を出して3年めに配属された「Hibiya-Kadan Style」の店舗では、店舗責任者を務めながら、自らも接客を担当。もともと日比谷花壇の社内には技術級制度があり、段階を踏んでレベルアップする教育制度もあるが、それだけに甘んじず、いくつかの外部のレッスンにも通って技を磨いた …