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SPORTS TEAMに学ぶ集客術

「神宮呑み」で注目されるスワローズ 観客動員を向上させた「改革」

東京ヤクルトスワローズ

東京ヤクルトスワローズの2018年の入場者数は192万7822人。2012年の132万2678人から1.5倍近く動員を伸ばした。近年は「神宮呑み」と呼ばれる一連の企画が、ビジネスパーソンの心をとらえている。同球団はどのようにして集客を成功させたのか、その背景に迫った。

東京ヤクルトスワローズの本拠地、明治神宮球場。ここ数年間、動員数を伸ばしている。2018年は1試合あたり2万7152人を集めた。

ビジターチームの人気が観客動員を左右する

東京ヤクルトスワローズは2012年以降、動員数を伸ばしている。2018年は1試合あたり2万7152人を集めた。本拠地である明治神宮球場の収容人数は3万1805人のため、毎試合平均で観客席の85%が埋まっている計算だ。

2000年代のスワローズは、集客に苦戦していた。2007年に球団入りし、現在は営業部で営業企画グループ次長を務める伊藤直也氏は、「2012年の入場者は1試合平均1万8371人でしたが、試合によっては1万人を下回る日もありました」と振り返る。

来場者の内訳についても、最寄り駅の東京メトロ銀座線・外苑前駅から、徒歩約5分という立地の良さもあり、スワローズファンではなく、巨人や阪神タイガースといった、ビジターチームのファンによって動員が左右されていた。

チケットの販売方法でも課題があった。人気のビジターチームとの対戦以外は、前売りでのチケット購入が少なく、当日の天候にも集客が左右されていたのだ。その割合は「平均的な試合で半分以上が当日券」(伊藤氏)というものだった。

「当時、インターネットを介したチケット販売は、各プレイガイドを通じて行っていましたが、座席の指定ができませんでした。各プレイガイドで球場の座席をエリアで切り分けて売っていて、私たちはその販売状況を把握できない、在庫管理ができていなかった」(伊藤氏)

来場者が身近なプレイガイドへ行っても、その座席を扱う店でなければ、希望の席を購入できない。当日券売り場であれば、前売券で残ったところからではあるが、希望の座席を選べる。来場者にとっては、目当ての座席のためにプレイガイドを探し回るよりも、試合日に球場へ行くほうが良かったのだ。

販売をプレイガイドに委託していると、在庫の管理に加えて、誰がチケットを購入しているのかという顧客のデータを得ることもできない。顧客のデータという点では、ファンクラブやメールマガジン会員はあったものの、それぞれ個別に運用しており、相互にデータを連携できていなかった。

伊藤氏には、「こうしたチケット販売形態は衝撃」だった。というのも同氏は、日本の大学を卒業後、スポーツ経営を学ぶためにアメリカへ留学し、その後米プロバスケのNBA「フィラデルフィアセブンティシクサーズ」や、米大リーグ「フィラデルフィアフィリーズ」で、チケット営業やシーズンシート営業を経験してきたからだ。

「自分たちのお客さまが誰なのかがわからない。そこをなんとかしようというのが改革のきっかけでした」(伊藤氏)

指定席を増やし来場者の快適性を向上

チケット販売を球団主導に切り替えたのは、入社から6年が経った2013年。

「チケットが売れ、ファンクラブ会員が増えれば来場者データもたまるという青写真を描いていました」(伊藤氏)

まずは「スワローズファンで球場の半分を埋める」ことを目標に掲げた。クレジットカード決済限定ではあるが、二次元コード発券で、販売手数料もなくした。インターネットから購入する場合は、座席を選択できるようにもなった。

チケット購入のWebサイトには、球場内パノラマビュー画面を用意、「シートビュー」機能で、選んだ座席からの景色をイメージできるようにした。

会員数の増加も目指した。ファンクラブの仕組みにも手を入れた。会員種別の見直しや、会員向けのチケット先行発売や割引販売、ポイント制度を導入するなどの改革を実施。シーズン中の会員向けイベントも充実させ、選手との写真撮影なども企画した。

これらの施策によって来場者は増えたが、いくつか新たな課題も見えてきた。

たとえば、ホーム、ビジターのファンの混在で発生するトラブル。これは、座席エリアによって相手チームグッズの着用や応援を制限することで対応した。

また、外野を自由席としていたため、人気カードによっては試合前日から、場所取りが発生していた …

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