イタリアの高級ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」の商品が2018年11月21日、「淘宝網(Tモール)」や「京東商城(JD.com)」など大手をはじめ、中国国内のEコマースサイトから姿を消した。発端となったのは1本の動画。なぜ、ここまでの事態に発展したのか。企中国市場進出を支援する、DIGDOG代表の陳暁夏代氏が解説する。
発端となったティザー動画 初動対応の分かれ目
ドルチェ&ガッバーナ(D&G)が一日にして中国市場を失ったニュースは、その日のうちに日本中をかけめぐった。
D&Gは今回、中国で徹底的な非難を浴びる結果となったが、それまでの商品は、その派手なテイストもあいまって、中国内ではファンの多いブランドだった。また、マーケティングにおいても、ドローンを活用したショーを開いたり、世界中のミレニアルズやインフルエンサーを起用したりと、その演出に対する評価は高かった。それだけに、このたびの騒動を悲しんでいるファンは、決して少なくない。
そもそもD&Gにとって、2018年11月21日は華々しい一日となるはずだった。上海で、大規模なイベント「The Great Show」を開催する予定だったからだ。前述のとおり、その演出を楽しみにしていた消費者は多い。
2018年11月17日─。ショーの開催に先駆け、D&Gは中国最大手のSNS「Weibo」や「Instagram」など、各種SNSの公式アカウントで、「The Great Show」の期待を高めるべく、宣伝用のティザー動画を公開した。
「Eating with Chopsticks(箸での食事)」と題し、D&Gの衣装をまとったアジア人女性が、巨大なピザやパスタを箸で食べる姿を描いた動画だ。箸を片手に1本ずつ持ったり、食べ物に刺したりするさまは、テーブルマナーに適っているとは思えない映像だった。
公開後、ソーシャルメディアでは、「(中国人を)バカにしているのか?」という声がわき上がった。差別的感情の表れ、侮辱ととらえられたのだ。
一方、この段階ではまだ、D&Gの従来の広告を知るファンから、「D&Gの広告表現は、過激なものが多いので、気にしなくていいのでは?」といった、擁護する意見も見られた。
しかし、どのような意図を持って、あのような動画を制作、配信したのか、D&Gの真意は読み取れないまま。しだいに議論が熱を帯び始めるのだが、この時点で、D&Gが映像についての見解を発表していれば、今回の騒動にはつながらなかったかもしれない。
現実はそうはならず、中国国内のD&Gチームは、静かに当該の動画を「Weibo」から削除した …